3


 3月12日・土曜日。
 大きな屋敷の広い部屋で、眞姫は所在なさ気にきょろきょろ周囲を見回した。
 詩音が迎えに来たのは、約束時間ちょうどの15時であった。
 今日は彼の誕生日パーティーが催される日であるが、パーティー開始時間は夕方の18時からである。
 なのに何故こんなに早く彼の家に到着しているのかというと。
 数日前眞姫は、誕生日プレゼントは何がいいかと詩音に尋ねた。
 その時に彼はこう言ったのである。
『じゃあ、パーティー当日のお姫様のコーディネートを王子に任せてくれないかな? 王子の選んだドレスをお姫様に着て欲しいんだ。それが、僕へのプレゼント。当日はそうだな、15時にお姫様を迎えに行くからね』
 そう言われて一瞬きょとんとした眞姫だったが、要はパーティー当日の眞姫の服装を自分に選ばせてくれということだと理解した。
 そういった経緯で今、パーティー開始時刻よりもかなり早く眞姫は詩音の家に来ているのである。
 詩音の家は大きなお屋敷で、ひとつひとつの部屋も大きい。
 家具も上品で高級そうなアンティーク調のものが多く、彼の醸し出す雰囲気と合っていた。
 通された部屋には優しくクラシック音楽が流れており、心が安らぐような感覚を覚える。
 物珍しそうに部屋の中を見ていた眞姫だったが、カチャリとドアの開く音に振り返った。
「ご機嫌いかがかしら、お姫様。早くからお呼びしてごめんなさいね」
 詩音と同じ優雅な印象の柔らかい微笑みを浮かべ、詩音の母である静香は言った。
 その言葉に首を振り、眞姫はぺこりと頭を下げる。
「こんにちは、お邪魔しています」
「うちの王子ったら、お姫様のドレス姿を早く見たいって朝からずっと楽しみにしているのよ」
 くすくすと上品に笑い、静香は色素の薄いブラウンの瞳を楽しそうに細めた。
 それから持ってきたドレスを傍の洋服掛けに掛け、続ける。
「お姫様のドレス、後ろは私が留めて差し上げるわ。着替えたら声をかけて頂戴ね」
「あ、はい。分かりました」
 空気のように澄んだ声で優しくそう言った静香に、眞姫は彼女にもう一度頭を下げた。
 静香は再び眞姫を部屋に残して出て行く。
 パタンとドアが閉まった後、眞姫は用意されたドレスを見つめた。
「わぁ、すごく綺麗なドレス……」
 詩音の選んだそれは、純白のドレスだった。
 アクセント程度に裾や袖に小花のレースがついている、シンプルな印象のものである。
 正面はそんなシンプルなデザインであるが、逆に後ろは編み上げになっていて腰の部分に大きなリボンがついており、とても可愛らしい。
 何かといつも夢見がちな言動の自称・王子様な詩音の好みということで、眞姫はもっと派手でゴージャスなデザインのものを想像していたが、いい意味でその予想に反していた。
「あ、あれも出しておかなきゃ」
 ドレスに見惚れていた眞姫は、ふと思い出したようにそう呟いてあるものを鞄から取り出した。
 それは、詩音が眞姫に持ってきて欲しいと頼んでいたものであった。
 眞姫はもう一度純白のドレスを見つめて感嘆の溜め息をついてから、着替えを始める。
 それから部屋の外にいる静香を呼び、後ろの編み上げの部分を留めてもらった。
「とても素敵よ、お姫様。サイズはどう?」
「あ、大丈夫です。ぴったりです」
 眞姫は鏡を見て、嬉しそうに笑顔を浮かべる。
 純白のそのドレスは、眞姫の魅力をより一層引き立てていた。
 正面から見るとシンプルで優雅であるが、後ろから見ると背中の編み上げと大きなリボンがとても可愛らしい。
 すっかり気に入ったように鏡をいろいろな角度から見ている眞姫に微笑み、静香は満足そうに言った。
「本当によくお似合いだわ、まるでウェディングドレスみたい。そうだわお姫様、あれを持ってきていただけたかしら?」
「あ、はい。持ってきました」
 静香の言葉に、眞姫は先ほど鞄から取り出したものを彼女に渡す。
 静香はそれを受け取って瞳を細め、そしてそれを眞姫につけた。
 それは――鳴海先生から貰った、薄紫色の石のあしらわれたペンダントである。
 先生の母親であり、先代の“浄化の巫女姫”である晶の形見の品。
 純白のドレスにペンダントの薄紫がほどよいアクセントになり、一層上品な雰囲気が増す。
「お兄様も将吾さんも今日いらっしゃるから、きっとお喜びになるでしょうね」
 静香は感慨深く眞姫の姿を見つめてそう呟いた。
 詩音の母である静香と鳴海先生の父である傘の紳士は実の兄妹である。
 よってこのペンダントの前の持ち主・晶は、静香の義理の姉にあたる。
 義理の姉の面影を懐かしむように眞姫を見つめた後、静香は彼女を近くの椅子へと促した。
「さあ、髪を結って差し上げるわ。こちらへどうぞ、お姫様」
 言われるままに鏡の前の椅子に座り、眞姫は改めて目の前の自分の姿を見た。
 普段こういうドレスを着る機会など滅多にないため、眞姫の心は喜びに弾んでいた。
 静香の言うように、純白のドレスはまるでウェディングドレスのようである。
 それに、胸の位置で揺れている綺麗な薄紫色のペンダント。
 こんな素敵なコーディネートをしてくれた詩音に感謝しながらも、眞姫は綺麗に結われていく髪を鏡越しに見つめた。
「こうやって女の子の髪を結ってあげることが夢だったんだけど、うちの子は王子様ですからね。今、すごく嬉しいわ」
 器用に眞姫の髪をまとめながら、静香は優しい声でそう言った。
 眞姫は頭を動かさないように注意しながらにっこりと微笑む。
「私もこんなに綺麗にしていただいて、すごく嬉しいです」
 静香は両サイドの髪をそれぞれ少しずつ取って編んでアップにし、白い花のヘッドピースを左右につけて留める。
 すべてアップにするよりも、この方がより眞姫の可愛らしさが引き立っている。
 髪をセットし終えた後に軽く化粧を施し、静香はドレスに合わせた白の靴を持ってきた。
 その靴を履いて、眞姫は椅子から立ち上がった。
 それと同時に、コンコンと部屋のドアのノックが鳴る。
「あら、ちょうどいいタイミングね。王子が待ちきれずにお姫様に会いに来たみたいね」
 優雅な笑みを浮かべ、静香は部屋のドアを開けた。
 そこに現れたのは静香の言う通り、真っ白なタキシードを身に纏った詩音であった。
 母親似の上品で繊細な美少年の詩音にその白のタキシードはよく似合っている。
 部屋に入ってきた詩音は純白のドレスを纏った眞姫にゆっくりと近づいた。
「お姫様……」
「詩音くんどうかな、似合うかな?」
 にっこりと眞姫は目の前まで歩いてきた詩音に微笑む。
 そして、その次の瞬間。
「し、詩音……くん?」
 眞姫はブラウンの瞳をおもわず大きく見開く。
 純白のドレス姿の眞姫を、詩音がぎゅっと抱きしめたからである。
 温かい彼の体温を感じ、眞姫は胸の鼓動を早めた。
 肩に回された詩音の細い指の感触が直に肌に触れ、眞姫は顔を赤らめる。
 詩音は眞姫を抱きしめたまま、彼女の耳元で優しく囁いた。
「とても綺麗だよ、僕のお姫様。王子は嬉しいよ、ありがとう」
「えっ? あ、お礼を言うのは私の方よ、詩音くん。こんなドレス着れるなんて嬉しいわ」
 まだドキドキする胸を押さえながら、眞姫はそう言った。
 詩音はようやく眞姫から離れ、普段と変わらない微笑みを浮かべる。
「今日は僕の生誕記念パーティーに来てくれてありがとう、お姫様」
 真っ直ぐに詩音に見つめられ、眞姫は照れくさくなってふと俯いた。
「こちらこそ呼んでくれてありがとうね。あっ、そうだ」
 眞姫はぽんっと手を打って、それから鞄からあるものを取り出す。
 そしてそれを詩音に手渡した。
「詩音くん、お誕生日おめでとう。これ、誕生日プレゼント。やっぱり手ぶらじゃ何だし、何か詩音くんにあげたいなって用意してきたの」
「僕にプレゼント? 嬉しいな、お姫様。ここで開けても構わないかな?」
「うん、開けてみて」
 こくんと頷いた眞姫を見てから、詩音は渡されたプレゼントを丁寧に開ける。
 プレゼントの中身は、真っ赤な薔薇と白の小花のコサージュであった。
「一緒に住んでいる叔母に教えてもらってね、コサージュ作ってみたの。詩音くんって正装する機会多いかなって思って」
「この綺麗な薔薇のコサージュ、お姫様が作ってくれたのかい?」
 そっと透明のケースから薔薇のコサージュを取り出し、詩音は感激したようにそれを見つめて呟く。
 そして真っ白なタキシードの胸の位置にそのコサージュを付けた。
「まあ、すごく綺麗ね。白のタキシードにとても映えるわ」
 静香も詩音の胸のコサージュを見て声を上げる。
 詩音は嬉しそうに整った顔に笑顔を浮かべ、そして改めて眞姫に言ったのだった。
「とても嬉しいよ、お姫様。ありがとう」




 ――数時間後。
 たくさんの来賓で大きな屋敷の中は賑わいをみせている。
 夕方になって詩音のパーティーが始まり、眞姫は周囲を見た。
 詩音の誕生パーティーは盛大で、各分野の著名人や有名人の姿も多く見られる。
 天才ピアニストとして世間から注目されている詩音なだけあり、顔が広いのである。
 その上に父は世界的な指揮者、母は有名な声楽家であるために、海外からの客も少なくない。
 そんな中、きょろきょろと珍しそうに周囲を見回していた眞姫だったが。
 スッと彼女の目の前にジュースの入ったグラスが差し出される。
 それを受け取って顔を上げ、眞姫はパッとその表情を変えた。
「ご機嫌いかがかな、お姫様」
「あっ、傘のおじさま。こんばんは」
 目の前に現れた人物・傘の紳士に、眞姫はぺこりと頭を下げる。
 紳士はブラウンの優しい瞳を彼女に向けた。
「綺麗だよ、お姫様。純白の上品なドレスが素敵だね。それに……」
 紳士は一旦言葉を切り、そしてふっと笑顔を浮かべて言葉を続ける。
「それに、そのペンダント……とても君に似合っているよ」
 眞姫の胸元で揺れる妻の形見のペンダントを、紳士はじっと見つめた。
 眞姫はそんな紳士の様子ににっこりと微笑む。
「ありがとうございます。このペンダント、すごく綺麗ですよね。大切にします」
「君がつけてくれるなんて、妻もきっと喜んでいるよ」
 ぽんっと優しく眞姫の頭に手を沿え、紳士は笑った。
 眞姫は視線を落としてペンダントに向け、その柔らかな美しさに見惚れたのだった。
 ……そんな眞姫たちから、少し離れた隅のテーブル。
 あまりこういう派手なパーティーが好きではない鳴海先生は、ふうっと小さく嘆息する。
 それから手元にあるワイングラスを手にした。
 詩音と従兄弟である先生もこのパーティーに招待されていたのであるが、出席するつもりはなかった。
 だが、父親である傘の紳士に半ば強引に連れてこられたのである。
 先生は切れ長の瞳を細め、そして呟いた。
「あの人が俺をここに連れてきた理由が、ようやく理解できた……」
 先生の視線の先には、純白のドレスを着た眞姫の姿があった。
 そして彼女の胸元には、自分があげた母の形見のペンダントが光っている。
 母である晶と眞姫の持つ雰囲気は全く違うものなのに、不思議とペンダントをしている彼女の姿が母と重なる。
 先生はワインをひとくち飲み、それからふと背後に視線を向けた。
「はぁい、なるちゃん。一緒に飲みましょっ」
「由梨奈」
 真っ赤でセクシーなスリップドレス姿の由梨奈は、持っていた自分のグラスを先生のグラスにカチンと当てる。
 それからにっこりと笑って言った。
「そうねぇ、可愛いお姫様に乾杯ってカンジ?」
 先生の視線の先にいた眞姫を見てから、それから由梨奈はふと表情を変える。
 そして長いウェーブの髪をかきあげて続けた。
「それとも……慎ちゃんとなるちゃんの再会に乾杯、かしら?」
「…………」
 その言葉に、先生は無言で由梨奈に目を向ける。
 小さく溜め息をついた後、由梨奈は言った。
「慎ちゃんと会ったんですってね。会ったどころか、軽く一戦交えたらしいじゃない。どうして私に何も言ってくれないの?」
「由梨奈、やはりおまえはアメリカに帰れ。今からでも遅くないはずだ」
 複雑な表情を浮かべて先生は由梨奈から視線を逸らす。
 由梨奈はそんな先生を見つめたまま、美人な顔に笑みを作った。
「なるちゃん、私がそう言われて素直に帰ると思う?」
「どうしても日本に残ると言うのか? おまえにとって辛い現実しかないと分かっていても」
「ええ、もう決めたから。辛いのは、私だけじゃないでしょ? それに私がアメリカに帰っちゃったら、なるちゃんや眞姫ちゃんやボーイズたちが寂しがるだろうしっ」
 由梨奈はそう言って悪戯っぽく笑い、くいっとワインを飲んだ。
 先生は何かを考えるように、無言で視線を落とす。
 その時だった。
「こんばんは、鳴海先生」
 遠慮がちにそう声がし、先生はふと顔を上げる。
 そんな先生の切れ長の瞳に映ったのは、純白のドレス姿の眞姫だった。
「清家……」
「あらぁ、眞姫ちゃんっ。今日も可愛いわねぇっ」
「由梨奈さん、こんばんは」
 きゃっきゃっと手を取る由梨奈に、眞姫はにっこり微笑む。
 それからちらりと先生に視線を戻し、おそるおそる口を開いた。
「先生、あの……このペンダント、ありがとうございます」
「…………」
 そっとペンダントを掴み、眞姫は嬉しそうにそれを見つめる。
 先生はそんな彼女の様子に目をやってから言った。
「礼には及ばない。そのペンダント……よく似合っている」
 相変わらず淡々とした口調ではあるが、先生はそう言ってブラウンの瞳をふっと細める。
 眞姫は意外なその言葉に少し驚いた表情をしたが、すぐに嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「大切にします、このペンダント。先生、ありがとうございます」
 もう一度ぺこりと頭を下げた眞姫の綺麗に結われた髪が、ふわりと揺れる。
 先生はそんな眞姫の姿を見つめ、そして何かを考えるようにブラウンの髪をそっとかきあげたのだった。




 楽しいパーティーも終盤に近づいてきた頃。
 眞姫は会場の外のバルコニーに、ひとり足を運んだ。
 冷たい風が吹きつけて少し身を縮めたが、眞姫はすっかり暗くなった夜の景色に目を向ける。
 少し高台にある屋敷から見えるその風景はとても美しいものであった。
 風で乱れた髪を整え、眞姫はしばらくその景色を見つめていた。
 ……その時。
 スッと眞姫の肩に上着が掛けられた。
 驚いて振り返った眞姫の視線の先にいたのは。
「あ、詩音くん」
「お姫様がバルコニーに出て行くのを見かけてね」
 柔らかな笑顔を眞姫に向け、詩音は彼女の隣に並ぶ。
 真っ赤な薔薇のコサージュのついた上着の温かさに小さく微笑んでから、眞姫は詩音を上目遣いで見た。
「主役の詩音くんがこんなところにいて、大丈夫なの?」
 たくさんの来賓に挨拶をして回る詩音を見て、眞姫は今まで彼に話しかけることができないでいた。
 パーティーの前にお祝いの言葉は言えたしプレゼントも渡せたので、無理に話しかけて気を使わせてもと思っていたのである。
 詩音はにっこりと笑顔を浮かべて頷いた。
「大丈夫だよ、お姫様。王子はお姫様のことを探していたんだから」
 それからドレス姿の眞姫を見つめて満足そうに言った。
「綺麗だよ、僕のお姫様。あまりのお姫様の美しさに、世界を照らす月さえも霞んでみえるよ」
「詩音くん……」
 詩音のその言葉に、眞姫は恥ずかしそうに俯く。
 そんな眞姫の様子にふっと微笑み、詩音は彼女の手をそっと取った。
 そして手の甲に優しく口づけをし、続ける。
「今日は来てくれてありがとう、お姫様。お姫様に祝ってもらえるなんて、王子にとってこれ以上にない最高の生誕記念日だよ。それにお姫様からもらった愛の薔薇のコサージュ、王子の宝物にするから」
 彼の柔らかい唇の感触が伝わり、眞姫はドキッとした。
 詩音の色素の薄い綺麗なブラウンのサラサラした髪が風に靡いている。
 自分を見つめる彼の瞳は月のように優しい色を湛えていた。
「コサージュ、喜んでもらえてよかったわ」
 照れたように大きな瞳を細め、そして気を取り直して眞姫は言った。
「詩音くんって、将来はやっぱり世界を回るピアニストになるの? あんなに綺麗なピアノの旋律なら、きっとたくさんの人の心を癒せるわ。私も詩音くんのピアノ聴いてたらすごく心が安らぐもん。人を癒すことのできるものを生み出せるなんて、すごいよね」
「ありがとう、お姫様。でも、お姫様も十分に王子の心を癒してくれているよ?」
 優しい笑みを眞姫に返し、詩音は風に吹かれている彼女のブラウンの髪を撫でる。
 それから詩音はおもむろにスッと瞳を伏せた。
 そして、ゆっくりと美形の整った顔を眞姫に近づける。
 詩音の綺麗な顔が目の前に迫り、眞姫はドキドキしながらも驚いたような表情を浮かべた。
 その時。
「あっ、詩音くん……詩音くんのお母様が呼んでるよ?」
 眞姫はバルコニーに姿を見せた静香の姿を見つけ、詩音にそう言った。
 詩音は伏せていた瞳を開き、そしてふうっと小さく嘆息する。
 それからもう一度眞姫の頭を優しく撫でて、普段通りの優雅な微笑みを浮かべた。
「ここは寒いから中に戻りましょうか、お姫様」
「え? あ、うん、そうだね」
 瞳をぱちくりさせ、眞姫は慌てて頷く。
 そんな眞姫をスマートにエスコートし、詩音は彼女とともに歩き出した。
 眞姫は少し赤くなった頬に手を沿え、そっと深呼吸をする。
 それから風に煽られたブラウンの髪を手櫛で整え、無意識に胸元の薄紫色のペンダントの石を握り締めた。
 詩音は隣を歩くそんな眞姫の姿をじっと愛しそうに見つめ、そしていつものように整った顔に柔らかな微笑みを浮かべたのだった。