12月19日・日曜日。
クリスマス前のためか師走の忙しさか、繁華街は通常の休日よりもさらに賑わいをみせている。
普段はあまり人の多いところは好きではない健人であるが、今日はそんな人の波も彼の目には入っていなかった。
健人の隣には、彩り鮮やかに飾られたショーウインドウを飽きることなく楽しそうに見ている眞姫の姿があるからである。
「ねぇ、健人。どこに買い物行く? クリスマスプレゼント、何がいいかな?」
眞姫はふと瞳を健人に向け、にっこりと笑う。
ふたりはクリスマスパーティーで行うプレゼント交換のプレゼントを、一緒に繁華街まで買いに来ていた。
眞姫は健人の答えを待たずに、何かを見つけてタッタッと数歩駆け出す。
そして、ショーウインドウを見つめる栗色の瞳を輝かせた。
「あれ、すごく可愛いなぁ……」
そう言って、眞姫はほうっと溜め息をつく。
健人も眞姫と一緒にショーウインドウを覗き込み、言った。
「どれだ? 姫」
「あのね、あそこの真ん中に飾られてる、白いふわふわしたニットの帽子。後ろの部分がふたつに分かれてて、長いのが可愛いなぁって」
「あれか、姫に似合いそうだな。入ろうか」
そう言って健人は、眞姫の手をスッと引いて店内に足を向ける。
眞姫は急に握られた手に少し驚きながらも、コクンと頷き彼に続いた。
帽子をはじめとしてマフラーやアクセサリーなどの小物を扱っている小さな店の中を見回してから、健人は眞姫の気に入っていた帽子を見つけて手に取る。
前後を確認するように中を見て、そして健人はそれを眞姫にそっとかぶせた。
それを少し自分で整え、眞姫は上目遣いで健人を見る。
「どうかな、似合う?」
眞姫は自分でも試着した感じを確かめたくて、きょろきょろと鏡を探した。
その真っ白なニット帽は、眞姫によく似合っている。
帽子の後部がふたまたになっており、うさぎの耳のように垂れているデザインが珍しい。
健人は満足そうに青い瞳を細めた後、スッと手を伸ばす。
そして帽子の正面を掴み、ぐいっと前に引いた。
「ほら、すごく似合ってるよ、姫」
「あっ! もーうっ、健人ってばっ」
瞳が隠れるくらいに帽子を下げられた眞姫は、くっくっと楽しそうに笑う健人にじろっと目を向ける。
それから気を取り直し、眞姫は見つけた鏡の前で帽子をかぶり直した。
「今からの季節、あったかそうじゃない? でもデザイン変わってるからなぁ、合う服選ぶのとか難しいかな」
うーんとどうしようか考えるように鏡を見ている眞姫に、健人は思いついたように口を開く。
「じゃあ俺、これをクリスマスプレゼントにするよ」
健人のその言葉に、眞姫はきょとんとした。
それから瞳をぱちくりさせて、言った。
「えっ? でも、誰に当たるか分からないんだよ? 私か梨華に当たればいいけど、ほかの人に当たったらどうするの?」
健人はそんな眞姫の言葉に、青い瞳を細めて妙に自信満々に答える。
「大丈夫だ、何となく俺のプレゼントが姫に当たる気がするからな」
「えっ、で、でも……あっ、健人っ」
どうしていいか分からない様子の眞姫にお構いなしで、健人は彼女のかぶっている帽子をひょいっと取った。
そして、ツカツカとレジへと向かったのだった。
眞姫はしばらくその場で唖然としていたが、慌てて健人の隣に並ぶ。
「ねぇ、本当にいいの? 私に当たるかどうか分からないし」
「じゃあ、姫も俺のプレゼントが当たるようにって祈っててくれ。そしたら俺のプレゼントが、きっと姫の手元にくる気がするから」
あまりにも自信に溢れた健人のその言葉に、眞姫はそれ以上何も言えなかった。
諦めたようにふうっと嘆息した後、眞姫は気を取り直して健人を見る。
そして無邪気に笑って両手を合わせ、言った。
「健人のプレゼントが当たりますようにっ……こんなカンジ?」
健人は相当満足そうな微笑みを浮かべ、眞姫の頭を優しく撫でる。
「ああ。よくできました、姫」
それから綺麗に包まれた商品を受け取って、ふたりはその店を出た。
店を出た瞬間、師走の冷たい風が吹きつける。
それに小さく身を縮めた後、眞姫は笑って言った。
「でもあのニット、拓巳とかにかぶせても似合いそうじゃない? きっと可愛いよ、うさぎみたいで」
「……俺は姫にかぶってもらいたいな」
思わず白のニット帽をかぶっている拓巳の姿を想像し、健人は眉を顰める。
そんな健人を後目に、眞姫は楽しそうに言った。
「健人はどんなものが欲しい? 私、男の子が欲しいものってよく分からないから。あ、あそこの店に入ってもいい?」
そう言って眞姫は、そっと健人の手を取った。
その柔らかな感触に健人は青い瞳を思わず見開く。
眞姫の手は健人の手よりもずっと小さく、ひんやりとしていた。
そんな一瞬動きの止まった健人を見て、眞姫は首を捻る。
「どうしたの、健人?」
「いや……あの店に入るんだろう? 行こう」
にっこりと眞姫に微笑み、健人はゆっくりと歩き出す。
眞姫は一度小首を傾げたが、パッと表情を楽しそうなものに変え、健人を催促するかのように手を引いた。
健人は次第に熱を帯びてくる眞姫の手のひらの感触に、嬉しそうにふっと微笑んだのだった。
それから、数時間後。
うっすらと暗くなり始めた繁華街は、さらに賑やかになってきた。
ライトアップされた照明がキラキラと光りだし、行き交う人のクリスマス気分を盛り上げている。
そんな繁華街の一角、行きつけの喫茶店でその少女は満足そうにパフェを頬張っていた。
「いつも思うけど、そんなに甘いものばかり食べててよく太らないわねぇ、綾乃」
半ば呆れたように嘆息し、梨華は目の前で幸せそうな表情をしている綾乃を見る。
「んー、でもその分、結構動いてるし。あ、このアイスの部分美味しいよぉっ、いる?」
にっこりとスプーンを差し出す綾乃に首を振ってから、梨華は言葉を続けた。
「でもよかったわ、クリスマスプレゼントも買えたし」
「クリスマスパーティー、楽しんできてねぇっ。そのプレゼント、祥太郎くんに当たるといいね」
くすっと笑ってそう言う綾乃に、梨華はカアッと顔を赤らめる。
そして照れを誤魔化すように綾乃から視線を外した。
「なっ、べ、別に祥太郎のことなんて考えてプレゼント買ったわけじゃ……」
「またまたぁっ。梨華がプレゼント用に買ったあのパスケースたくさん色の種類あったけど、一番祥太郎くんが好きそうな色買ってたでしょ。綾乃ちゃんの目は誤魔化せませんよーっ」
きゃははっと楽しそうに笑う綾乃に、梨華は顔を真っ赤にしたまま首を大きく振る。
「そっ、そんなことないわよっ、結構人数いるから祥太郎に当たる確立だって低いのよ?」
「あ、でも祥太郎くんのプレゼントが当たる方が嬉しいよねぇ。彼って結構こだわりやさんでお洒落だから、小粋なものなんじゃない? 当たればいいねぇっ」
「まったく、綾乃ってば……」
気を取り直すように紅茶をひとくち飲んで、梨華はふと俯いた。
そして、おそるおそる目の前の綾乃を見て口を開く。
「ねぇ、綾乃から見てさ、祥太郎ってどう思う? 綾乃って意外と着眼点鋭いところあるから」
「祥太郎くん? そうねぇ……」
梨華の言葉に考えるような仕草をして、綾乃はパフェを食べていた手を止めた。
そして、言葉を続ける。
「祥太郎くんってハンサムだし背も高いし、性格も優しくて楽しいから彼氏にはかなりいいんじゃない? 軽口叩いてるけど、根はすごく真面目そうだし」
「そうねぇ、あれでいて中身は結構典型的なA型ってカンジだもんね」
納得したように頷く梨華を見つめ、綾乃はテーブルに頬杖をついた。
そして悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「でもねー、A型の男って結構注意よ? 最初はめちゃめちゃ優しいし尽くしてくれるけど、慣れてきたら釣った魚に餌を与えないってタイプ多いし、それに妙にプライドも高いでしょ? 結構亭主関白になる人多いんだって。根は暗くてマイナス思考な人多いし」
「ていうか、よく分析してるわねぇ。私もA型だけど、意外とマイナス思考だもんね」
はあっと溜め息をつく梨華に、綾乃は笑った。
「あくまで一般論よぉ、祥太郎くんがどうなのか分からないけどね」
それから綾乃はふっと漆黒の瞳を細め、続ける。
「私から見た祥太郎くんは、状況判断能力に長けててすごく冷静な人だなぁって思うよ。感情的にもあまりならないし、かと言って守りに回るわけでもない……計算高いところもあるしね。それに何より、どんな状況下でもサービス精神旺盛なカンジがまた楽しいし」
「……綾乃?」
綾乃の言葉に、梨華は首を傾げた。
綾乃は再びパクッとパフェを口に運び、にっこりと笑う。
「とにかく、祥太郎くんならかなり彼氏にいいんじゃない? 頑張りなよ、梨華」
「うん。ありがとう、綾乃」
顔を赤らめながらも、梨華は素直に綾乃に頷いた。
そんな梨華の様子を可愛らしく思いながら、綾乃はもうひとくちパフェを食べる。
梨華はそんな綾乃に改めて目を向け、言った。
「そういう綾乃は、彼氏作らないの?」
「え? 私?」
意外そうな表情を浮かべ、綾乃はきょとんとする。
それからうーんと考えてから、口を開く。
「そうね、私はまだ彼氏は作れないかな……今、別のことに忙しかったりもするし」
「それって、まだ前に好きだった人のことが忘れられないから? あんなことがあって忘れられないのも無理はないけど、そろそろ新しい彼氏を作った方が綾乃のためでもあると思うよ」
言葉を慎重に選びながら、梨華は言って聞かせるように綾乃に言った。
綾乃はふと表情を変え、そして小さく嘆息する。
「うん、分かってるわ。あの人のこと、そろそろ心の整理しないといけないってね。でも……その前に、私にはやることがあるの。あの人のために、やらなきゃいけないことが」
そう言って、綾乃はぎゅっと膝の上で拳を握り締めた。
そして、ふっと漆黒の瞳を伏せる。
綾乃の憧れていた人が涼介によって殺されたのは、1年半ほど前である。
そのショックを忘れたいために、特に好きでもない男と数人付き合ってみたりもした。
だが、そんな男たちは綾乃の心を癒してはくれなかった。
それに気が付いた綾乃は、彼の無念を晴らそうと固く心に誓ったのだった。
「綾乃、ごめんね。ツライこと思い出させちゃって。でも、綾乃には幸せになって欲しいから」
「ううん、ありがとうね、梨華。綾乃ちゃんはもう元気だから。彼氏、いい人がいたらいいんだけどねぇっ。誰かいない? むしろ綾乃ちゃん、梨華をお嫁さんに貰いたいくらいよぉっ」
明るい声でそう言って、綾乃は無邪気に微笑みを浮かべる。
梨華も顔を上げて、笑顔を作って綾乃に向けた。
「綾乃のところにお嫁入りは、ちょっとイヤかも。思いきり振り回されそうだもんね」
「あははっ、大切にするってばぁっ、たぶん」
「そのたぶんっていうのが、かなりアヤシイのよね」
くすくす笑いながら、梨華はティーポットに残っている紅茶をカップに注ぐ。
……その時だった。
綾乃の表情が、おもむろに変わる。
テーブルに置いていた綾乃の携帯が、ブルブルと誰かからの着信を知らせたからである。
「ちょっと電話出てきてもいいかな?」
「あ、うん。いいよ」
こくんと頷いた梨華に微笑んでから、綾乃は携帯を持って席を立つ。
店を出て、そして綾乃は通話ボタンを押して携帯を耳に当てた。
「もしもし?」
『こんばんは、綾乃。今少し時間いいかな?』
優しくて柔らかなその声に、綾乃はにっこりと笑う。
「ええ、大丈夫ですよぉっ。どうされたんですか? 杜木様」
『直接会って話したかったんだが、少々仕事が立て込んでいてね。電話ですまない』
「杜木様とデートできないのは残念ですけど、時間できたらまた綾乃ちゃんとラブラブでデートしてくださいねっ」
『そうだな、時間ができたら必ず連絡するよ、綾乃』
ふっと微笑んでから、杜木は言葉を続けた。
『それで、用件だが……麻美の監視と護衛は、もう明日から必要ない』
「えっ? どういうことですか?」
杜木の意外な言葉に、綾乃は驚いた表情をする。
そんな綾乃の様子を後目に、杜木は言った。
『先日麻美に会ったんだが、そろそろ仕掛けようとしているようだったからな。今は様子を見て機会を伺っているようだが、数日後には動きをみせるだろう』
「だったら尚更、援護が必要じゃないんですか? 麻美ちゃんは“能力者”を始末しようとしてるんでしょう? でも戦闘が得意じゃない麻美ちゃんが、そう簡単にひとりで“能力者”を片付けられるとは思えないんですけど」
綾乃の言葉に、杜木は優しく答える。
『考えてごらん、綾乃。確かに麻美には“能力者”を始末しろと指示を与えたが……彼女に本当に期待していることは、“浄化の巫女姫”の能力開花だ。策略家の麻美のことだ、きっと“能力者”に仕掛ける前に“浄化の巫女姫”に近づくはず……これから先は、言わなくても分かるな?』
「あ、そっか……次に眞姫ちゃんの蘇るだろう能力のことを考えたら、心配しなくても大丈夫ですね」
納得したように頷いた綾乃に、杜木は満足したように笑った。
『察しのいい子は好きだよ、綾乃。智也にも私から連絡しておく。そういうことだ』
「はい、分かりました、杜木様。また何かあったら連絡くださいね」
『私は仕事に戻るが、何かあれば携帯の留守電にでも連絡をくれ。それでは、あまり悪戯せずにいい子にしているんだよ、綾乃』
物腰柔らかな声でそう言って、杜木は電話を切る。
綾乃も通話終了ボタンを押し、ストラップのじゃらじゃらついている携帯を握り締めて梨華の待つ喫茶店の店内へと足を向けた。
「眞姫ちゃんの、次に蘇る能力……か」
戻る最中にふとそう呟き、そして綾乃は長い漆黒の髪をふっとかきあげたのだった。
それから30分ほど経って、梨華と綾乃のふたりは喫茶店を出る。
ちらりと時計を見てから、梨華は綾乃に言った。
「どうする? もうちょっと時間的にブラブラできそうだけど」
「そうだなぁ、どうしよっか。帰るにはちょっと早いしねぇ」
そう言って、うーんと考える仕草をした綾乃だったが。
ふと視線を別のところへ向け、そして漆黒の瞳を細める。
そんな彼女の視線の先には……。
「ねぇねぇ、梨華。あそこにいるのって眞姫ちゃんじゃない?」
「えっ? あ、本当だ、眞姫と蒼井くんだわ」
「蒼井くんって……あの人が」
名前だけはよく知っている人物に、綾乃は表情を変えた。
それから何かを思いついたようにぽんっと手を叩き、梨華の腕を引いて歩き出す。
「えっ、ちょっと綾乃、どこに行くの!?」
驚いた様子の梨華に、綾乃はにっこり笑って言った。
「どこって、せっかくだから眞姫ちゃんと遊びたいなーって思って」
「ちょっと綾乃、邪魔しちゃ駄目よっ。蒼井くんに私が怒られるわ」
「大丈夫、大丈夫っ。眞姫ちゃんとも久しぶりにお話ししたいしっ」
きゃははっと楽しそうに笑う綾乃に、梨華は大きく溜め息をつく。
そして。
「眞姫ちゃーん! お久しぶりぃっ」
急に名前を呼ばれ、健人の隣を歩いていた眞姫は驚いたように顔を上げる。
「あっ、綾乃ちゃん! お久しぶりね。梨華も一緒にお買い物?」
「……綾乃って、あの藤咲綾乃か?」
眞姫の言葉に、健人は途端に怪訝な表情をした。
そんな健人の様子にくすっと笑って、綾乃は漆黒の瞳を細める。
「はじめまして、貴方が蒼井健人くんね。ふーん、そっかぁっ」
「ごめんね、蒼井くん……邪魔しちゃ悪いって言ったのに、綾乃が聞かなくて」
申し訳なさそうにする梨華を後目に、綾乃は眞姫に笑顔を向けた。
「あ、そうだ、何なら一緒にお茶でもしない? 久しぶりに眞姫ちゃんとも会ったし。いいでしょ?」
「え? うん、私は構わないけど……」
ちらりと健人を見て、眞姫は言葉を濁す。
綾乃が“邪者”であり、しかも“邪者四天王”のひとりだということは健人も知っている。
先程までとは全く印象の違う表情をしている健人を見て、眞姫はどうすればいいか分からない顔をした。
「綾乃、また眞姫とは違う日にお茶すればいいでしょ、ふたりの邪魔したら悪いよ」
ふたりを気を使うようにそう言って、梨華は綾乃に目を向ける。
健人はわざとらしく大きく溜め息をついてから、青い瞳を梨華に移した。
「俺は今からでも構わないよ。それに、おまえが謝ることじゃないし」
いくら友達同士とはいえ自分のいないところで眞姫と“邪者”である綾乃が接触するならば、今の方がまだ状況的にいいだろうと健人は思ったからである。
とはいえ、せっかくの眞姫とふたりきりの時間を邪魔され、健人は怪訝な表情を浮かべたままだった。
「じゃあ、どこでお茶しようか? 眞姫ちゃんっ」
綾乃はスッと眞姫と腕を組み、にっこりと微笑む。
「えっ、そうだね、どこにしようか?」
「久しぶりだから、眞姫ちゃんとはいっぱい話したいことあるんだぁっ、あ、あそこの喫茶店にする? さ、行こ、行こっ」
きゃっきゃっと楽しそうにはしゃいで、綾乃は眞姫を伴い歩き出した。
そしておもむろにふっと健人に視線を向けて漆黒の瞳を細め、意味あり気に笑う。
そんな綾乃の様子にむっとした表情を浮かべ、健人はじろっと綾乃に青い瞳を向けた。
「ごめんね、蒼井くん。せっかく眞姫とデートだったのに」
「おまえが気にすることじゃないよ、立花。行こうか」
梨華にそう言いつつ、健人は綾乃の背中で揺れる漆黒の髪を見据え、深々と溜め息をつく。
何か不穏な行動を起こす様子は今のところ綾乃には見られないが、綾乃の挑発的な態度が健人は気に食わなかった。
梨華は険しい顔をする健人を見て心配そうな表情を浮かべつつ、綾乃と眞姫に続く。
健人はもう一度深々と嘆息し、そして最後に喫茶店へと足を踏み入れたのだった。