12月17日・金曜日。
 午前中の授業が終わった昼休み、学校内は賑やかな生徒の声で満たされている。
「あーあ。仕方ないんだけどよ、姫に会えないのは寂しいよな」
 昼食を取り終わった拓巳は、自分の1年Hクラスの教室で溜め息をついた。
 ただでさえ眞姫と違うクラスな上に、眞姫たちのBクラスとHクラスは教室の位置も遠く、極め付けHクラスは男子クラスである。
 麻美に姿をコピーされている祥太郎とコピーされている可能性の高い拓巳のふたりは今、極力眞姫に近づかないようにしている。
 眞姫のクラスと教室の位置が遠いのは状況的にはおあつらえ向きなのであるが、男ばかりの教室内を見回した拓巳はもう一度嘆息する。
 拓巳と同じHクラスである祥太郎は、そんな拓巳を宥めるように肩を軽く叩いた。
「俺かて、姫と会えんのは寂しいわ。早いとこあの偽者をどうにかせななぁ」
「ちっ、あの“邪者”の女、今度俺の前に出てきやがったらただじゃおかねぇからなっ」
 机に頬杖をついて、拓巳は面白くなさそうな表情を浮かべた。
 ちらりと教室の時計に目を向けた祥太郎は、思い出したように拓巳を見る。
「そういえば拓巳、英語の課題出したか? 確か提出って今日までやなかったか? 俺は昨日の帰りに出してきたけど、拓巳はまだやったろ?」
「おっ、そういえばそうだったな。今から職員室に出してくるか」
 ガタッと席を立ち、拓巳は鞄の中から英語の課題を取り出した。
 そして課題を提出しに向かう拓巳に笑顔を向けて軽く手を上げ、祥太郎はその後姿を見送る。
 それから次の授業の教科を確認して教科書を取り出そうと視線を下に向けた、その時。
 祥太郎はふと表情を変え、再び顔を上げる。
 そして席を立ち上がり、ハンサムな顔に笑顔を浮かべた。
「何や、珍しいなぁ。どうしたんや?」
 祥太郎は、珍しくHクラスを訪ねてきた彼に声をかける。
 そんな祥太郎に、彼は言った。
「祥太郎。拓巳、いないのか?」
 Hクラスに姿を見せた彼・健人は、祥太郎にそのブルーアイを向ける。
「たっくんなら、たった今職員室に課題提出にいったで。まだそこら辺におるんやないか?」
「……そうか、分かった」
 祥太郎の言葉に少しどうするか考えた健人だったが、拓巳を追って職員室に足を向けた。
 そんな健人を見送り、祥太郎はふと首を傾げて呟く。
「珍しいわ、健人が拓巳に会いにくるなんてな。明日は雨か? ていうか大丈夫なんやろうか、あいつら」
 うーんと考える仕草をした祥太郎は、もう一度時計を見て前髪をかきあげたのだった。
 その頃、Hクラスから職員室までの階段を足早に駆け降りていた健人は下の階の階段を降りている拓巳の姿を見つけた。
「……拓巳」
 上の階から少し身を乗り出し、健人は拓巳に声をかける。
 拓巳はふと見上げて振り返り、足を止めた。
「健人? どうしたんだよ」
 ようやく拓巳に追いついた健人は、拓巳に青い瞳を向ける。
「おまえに話があってな」
「話? 何だよ、何か改まって気持ち悪いな……」
 そう言って眉を顰める拓巳に、健人は少しむっとしながらも言った。
「気持ち悪いってな……話は、昨日のミーティングのことだ」
「ミーティングのことって、まだ何か言い足りないことでもあるのかよ?」
 健人の言葉に怪訝な表情を浮かべ、拓巳は鬱陶しそうに漆黒の前髪をかきあげる。
 健人はそんな拓巳をちらりと見て小さく嘆息し、一息間を置いて続けた。
「違うよ。昨日は少し、俺も言いすぎたと思ってな」
「へ?」
 その言葉に、拓巳は一瞬きょとんとする。
 それから大きな瞳をぱちくりさせて恐る恐る言った。
「どうした、おまえ? 熱でもあるんじゃないか?」
「……人がせっかく悪かったと思ってるのに」
 まだ驚いた表情を浮かべている拓巳に、健人はむっとする。
 それから拓巳は、ぽんっと手を叩いて言った。
「あっ、もしかしておまえ偽者か!? 性格的に、健人が自分から素直に謝るなんて考えられないからな。一番にキレることはよくあるけどよ」
「おまえな……俺に喧嘩売ってるのか?」
 健人はその拓巳の言葉を聞いて、じろっと視線を向ける。
 それから大きく嘆息し、おもむろに瞳を伏せた。
 そして。
「……!」
 拓巳は次の瞬間、顔を上げて瞳を見開いた。
 それから健人に目を向け、言った。
「なっ……やっぱりおまえ、偽者かよ!?」
 拓巳の目の前に広がるのは、閑散とした“気”の空間。
 突然周囲に張られた“結界”に顔をしかめ、拓巳は表情を変える。
 健人は“気”の漲った右手をスッと下ろし、そして口を開いた。
「昨日、言ってただろう? 偽者かどうか確かめるには、相手に“気”を放てば分かるってな」
 健人のその言葉に、拓巳はふっと笑う。
 そして、スッと右手を握り締めた。
「確かに、あの偽者の女は戦闘は得意じゃなさそうだったからな。本物なら“気”の浄化くらいできるはずだからな」
 その言葉と同時に、拓巳の右手に眩い“気”が宿る。
 それから拓巳は、バチバチと音を立てて形勢される“気”の塊をぶんっと健人目掛けて放った。
 空気を裂いて迫ってくる“気”の軌道を見据え、健人は表情を変えずに右手を翳す。
 その掌に瞬時に漲った“気”が、拓巳の放った衝撃を受け止める。
 そしてジュッと音がしたかと思うと、健人目がけて唸りを上げていた“気”の塊は浄化されて消滅したのだった。
 その時。
「!」
 健人は青い瞳を見開き、表情を変える。
 そして身を翻し、突然襲い掛かってきた攻撃をかわした。
 いつの間にか間合いをつめた拓巳の右拳が、健人を捉えられずに空を切る。
 拓巳は攻撃を避けた健人に、間髪入れずに今度は蹴りを放った。
 それを腕でガードした健人は、さらに攻撃の手を緩めず襲いかかる拓巳の拳を受け止める。
 そして鋭い視線を向け、言った。
「偽者かどうかは、最初の“気”を浄化させた時点で分かったはずだろう!? どういうつもりだ?」
「ちぇっ、一発くらい殴ってやろうと思ったのによ」
 健人から自分の拳を取り返し、少し残念そうに拓巳は小声で呟く。
 さらに鋭い視線を投げ、健人はむっとした表情で言った。
「何だと? ……じゃあ、次は俺が試す番か?」
「え? ……げっ!」
 拓巳は反射的に健人から離れ、表情を変える。
 健人の右手に再び“気”が漲ったかと思うと、数発の眩い衝撃が放たれた。
 四方から迫る衝撃を見据え、拓巳も咄嗟にその手に“気”を漲らせる。
 放たれた衝撃はそれぞれ違う方向から襲い掛かってくる上に足場の悪い階段であるため、拓巳はそれらを跳躍してかわすことを諦め、くっと唇を結び“気”の防御壁を形成させた。
 次の瞬間、眩い光が複数弾けて大きな衝撃音が周囲に響き渡る。
 その余波がまだ晴れない中、拓巳は怪訝な顔をして言った。
「おまえなぁっ、わざとだろ!? 本物って分かってて、敢えて俺の苦手な防御壁張らせるような攻撃しやがって……ったく」
「お互い様だ、おまえだって俺が本物って分かってたのに攻撃してただろう?」
 そう言って、お互い気に食わない表情をしていたふたりだったが。
 突然表情を緩め、その顔に笑みを浮かべる。
「ていうか健人、おまえって負けず嫌いっていうか、俺より先にすぐキレるんだからよ」
「本当におまえは単純で馬鹿だよな、拓巳」
「いや待て、おまえもかなり単純で馬鹿だと俺は思うぜ?」
「おまえにだけは言われたくないな、心外だ」
 言っていることは相変わらずであるふたりだが、その表情は先程までと全く違うものに変わっていた。
 健人はそれから、改めてブルーアイを拓巳に向けて言った。
「昨日は言いすぎたよ。嫌な思いさせて、悪かったな」
「バーカ、おまえに素直に謝られると気持ち悪いって言ってるだろ? 俺の方こそ……ムキになっていろいろ言っちまってよ、すまなかったな」
 それから拓巳は、ちらりと腕時計を見て瞳を見開く。
「げっ! もう昼休み終わるじゃねーかよっ、おまえのせいで課題出しに行けなかったじゃねーかっ」
「俺のせいにするな、おまえが事前に提出してなかったから悪いんだろうが」
「んだと? あーあ、また次の休み時間潰れるじゃねーかよ」
「どうせ休み時間おまえがすることって言えば、アホ面して寝るだけだろ」
「うるせーなっ、放っとけっ。ていうか、さっさと“結界”解けよなっ」
 ……そんな、二人が“結界”内で言い合いをしている時。
「ていうか、ふたりともアホやなぁっ。普通に言えばいいのに“結界”まで張って、素直やないんやから」
 健人の張った“結界”の外で、祥太郎は微笑んだ。
「健人の“結界”が張られた時は驚いたよ、あのふたりって単純だし、すぐカッとなるし。でもよかったよ」
 校内で“結界”が張られたのを感じて駆けつけていた准も、苦笑しながらも安心したような表情を浮かべる。
「むしろ可愛いじゃないか、素直じゃない騎士たち。喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったものだね」
 にっこりと詩音も柔らかな微笑みを浮かべ、色素の薄い髪をかきあげた。
 祥太郎は“結界”に翳していた手を下ろし、准に目を向ける。
「これは改めてミーティングしなおす必要があるんやないか? 部長」
「そうだね。ていうか、副部長もたまには働いてよね」
「仲がいいことは美しいことだよ、騎士たち。さぁ、そろそろ戻ろうか」
 詩音が瞳を細めてそう言ったと同時に、午後の授業のチャイムが鳴り始めた。 
それから目の間の“結界”も解除され、少年たちは揃って急いで自分の教室へと戻る。
そしてそんな彼らの表情は、心の霧が晴れたかのようにすっきりとしたものだった。




 その頃。
 昼時のオフィス街は、制服姿のOLやスーツ姿のサラリーマンで賑わっていた。
 早足で颯爽とハイヒールを鳴らして歩いていたその女性・沢村由梨奈は、長い髪をふとかきあげた。
 そして、その足をおもむろにぴたりと止める。
 それと同時に、そんな彼女の横に一台の車が止まった。
 見覚えのあるブルーのマセラティーに、由梨奈は一瞬表情を変える。
 そしてその車からひとりの男がゆっくりと降りてきて、言った。
「乗っていかないかい? 由梨奈」
 運転席から出てきたその男・杜木は、助手席のドアを開けてにっこりと端正な顔に微笑みを浮かべた。
「あら、慎ちゃん。そうねぇ……せっかくだから、お言葉に甘えるわ」
 由梨奈は少し考える仕草をしたが、彼に促されるまま車に乗り込む。
 そんな彼女の様子に満足そうに笑い、優しく杜木は助手席のドアを閉めた。
 運転席に戻った杜木は車を発進させ、そして隣の由梨奈を見つめる。
「こうやっておまえとドライブするなんて、久しぶりだな」
「そうね、ふたりきりになるのも何年ぶりかしら? 元気そうね、慎ちゃん」
「おまえも元気そうで安心したよ。会いたかったよ、由梨奈」
 そして深い漆黒の瞳を愛しそうに細めた後、杜木は話を続ける。
「数年前は毎日のようにおまえと一緒にいた。それがあの頃は、当たり前のことだと思っていたんだけどな」
「…………」
 由梨奈は複雑な表情で、運転する杜木に視線を向けた。
 杜木はそんな由梨奈から瞳を逸らし、前方に広がるオフィス街の景色を瞳に映す。
 それから、ゆっくりと再び口を開いた。
「そういえば、覚えているかい? 高校の頃、一度だけ俺と将吾の意見が真っ二つに割れたことがあっただろう?」
「よく覚えてるわよ、意見が割れることなんてなかったふたりの言うことが、その時は正反対だったんですもの。しかもふたりとも頑固で、自分の考えを一歩も譲ろうとしないし」
 昔を懐かしむように、由梨奈は節目がちで言った。
 信号が赤になり、車が一時停車する。
 杜木はふと漆黒の瞳を真っ直ぐに由梨奈に向け、口を開く。
「その時、おまえはどっちの意見に賛成したか……覚えているかい?」
「覚えているわ。私はなるちゃんの意見に賛成だった。なるちゃんの考えていることが、私が思っていたことと同じだったから」
「そう、おまえは将吾の意見に賛成だった。あの時も……そして、今も。おまえはいつだって、愛している男に流されることもなく自分の意思を貫いてきた。まぁ、おまえのそういうところが好きなんだがな」
「……慎ちゃん」
 由梨奈は、杜木の漆黒の瞳をじっと見つめ返す。
 信号が青に変わり、再び車はゆっくりと走り出した。
 杜木は物腰柔らかな笑顔を浮かべ、そして優しく由梨奈に言った。
「俺はおまえのことを、今でも変わらず愛しているよ。そして再び同じ志を抱いて、ともに同じ方向に歩いて行きたいと思っている」
「慎ちゃん、私の性格知ってるでしょう? 私は私の決めたことを変えるつもりはないわ。だから今のままだったら、私たちはずっと反対方向にしか歩けない」
 凛とした表情で、由梨奈は杜木にはっきりとした口調でそう言った。
 杜木は相変わらず微笑みを浮かべたままであったが、おもむろに両の漆黒の瞳をスッと細める。
 その深い闇のような瞳は美しくもあり、見るものに恐怖のようなものを感じさせるものでもあった。
 由梨奈に視線を向け、杜木は静かに言葉を続ける。
「たとえ俺がおまえを殺すと言っても、進むと決めた方向を変える気はないと?」
「珍しいわね、慎ちゃんがそんなこと言うなんて。やっぱり慎ちゃん、変わったわ」
 杜木の言葉に怯むこともなく、由梨奈は彼を見つめた。
 そして、ふっと笑って言った。
「ていうか、慎ちゃんに私は殺せないわ。一度愛した女に手をかけるような人じゃないもの。私の知っている慎ちゃんは、だけどね」
「……そうかもしれないな。おまえには敵わないな、昔から」
 杜木はそう言ってから、おもむろに車を止める。
 そして車を降り、助手席のドアを開けた。
 そこは、由梨奈の会社のオフィスの前であった。
 由梨奈は車から降り、杜木に視線を向ける。
「ありがと、慎ちゃん。じゃあ、またね」
 カツカツと歩き出し、由梨奈は杜木にひらひらと手を振った。
「由梨奈」
 杜木は、そんな由梨奈を呼び止める。
 由梨奈は足を止め、振り返った。
 その時。
 ぐいっと由梨奈の腕が杜木に引き寄せられ、彼女の長い髪がふわりと揺れる。
 そして杜木は、自分の唇を由梨奈のものと重ねた。
 強引なそのくちづけに、由梨奈は一瞬動きを止める。
 軽いキスのあと、由梨奈は杜木の整った顔を見つめた。
「……キスは昔と変わらないわ。相変わらず上手ね、慎ちゃん」
「俺はおまえとのことを、決して諦めることはない。俺が死ぬまで、絶対にな」
「情熱的なところも相変わらずね。でも、私はもう別の人と生きていくって決めたし、現に今とても幸せよ? それに、今の慎ちゃんとは一緒に歩いていけないって言ったでしょ?」
「おまえのことはよく分かっているつもりだ。でもきっと、おまえは俺のところに戻ってきてくれると俺は信じているよ」
 険しい表情をしている由梨奈の長い髪を愛おしそうに撫で、杜木はにっこりと彼女に微笑みを向けてから車に戻る。
 運転席に乗り込んで軽く片手をあげ、そしてゆっくりとブルーのマセラティーを走らせた。
 走り去る車に背を向け、由梨奈は北風に揺れる長い髪を押さえる。
 それから懐かしい感触の残る唇にそっと指を這わせた後、由梨奈は決意を改めて固めるかのように顔を上げ、振り返らずに歩き出したのだった。




 その日の夕方。
 帰りのホームルームもとっくに終わって放課後の雑踏も少し落ち着き、人もまばらになってきた時間。
 少年たちは改めてミーティングを開くため、1年Bクラスに集まっていた。
 そんな彼らの雰囲気は、昨日とうって変わって和やかなものに変わっている。
 眞姫は安心したように微笑み、全員の顔を見回す。
 昼休みに何があったのか詳しくは知らない眞姫だったが、いつもの仲の良い雰囲気に戻った少年たちを見て嬉しく思っていたのだ。
「改めてこれからのことなんだけど、基本は鳴海先生が言っていたように、敵の能力を頭に入れてひとりひとりが細心の注意を払うことが必要だよ」
 その言葉に、全員が黙って頷いた。
 そして准は全員を見回し、間を少し置いて続ける。
「そして今回の“邪者”の能力の特性を考えても、僕たちひとりひとりが信頼し協力し合わないといけないと思うんだ。僕たちがここで仲間内で揉めているようだったら、それこそ“邪者”の思うツボだからね」
「部長の言う通りや、みんな仲良うせんといかんで? 特にそこのおふたりさんっ」
 ニッと笑う祥太郎に、拓巳は机に頬杖をついて苦笑する。
「昨日のことはよ、ムキになって悪かったって言ってるだろ?」
「ああ、分かってるよ。祥太郎」
 健人も小さく頷き、そして眞姫に視線を向ける。
 眞姫はそんな健人に気がつき、にっこりと微笑んだ。
 昨日のミーティングの帰り、眞姫は思いつめたような悲しい表情を浮かべていた。
 その時のことを思い出し、もう眞姫にそんな顔はさせたくないと健人は改めて思ったのだった。
 詩音は相変わらず優雅な微笑みを浮かべ、そして思い出したかのように言った。
「騎士たちの結束も強くなったところで、そういえばクリスマスパーティーの会場は決まったのかい?」
「そういえば日にちもないし、早く場所決めた方がいいよね。どうしようか?」
 詩音の言葉に、眞姫も頷く。
 准はもう一度全員を見回し、言った。
「会場のこと考えてきた人は……いなさそうだけど、いる?」
 あまり答えを期待していない様子の准に、拓巳はふと思いついたように手を叩く。
「祥太郎の家はどうだ? 無駄に部屋もいくつもあるしよ」
「へっ!? うちかい! って、何人や? この面子に梨華っちで、7人……まぁ、ギリギリ無理ではない人数ではあるけどなぁ」
 うーんと考える仕草をする祥太郎に、准はにっこりと作ったように笑顔を向ける。
「たまには部長に協力してくれるよね、副部長?」
「……何か目は全然笑っとらん気がするのは気のせいか、部長? ま、うちで別にいいけどな」
「じゃあ、場所は祥ちゃんの家で決まりね。それで、何しようか?」
 パッと楽しそうな表情を浮かべる眞姫に、健人は言った。
「姫はプレゼント交換がしたいんだろう? あとは適当にワイワイ楽しくやれればいいし、開始時間決めとけば問題ないんじゃないか?」
「ていうか、やっぱ夕方からか? 昼から酒飲めないしな」
「拓巳、一応まだ学校なんだからそれは言っちゃ駄目だよ」
 拓巳に視線を向けて嘆息した後、准は話をまとめる。
「場所は祥太郎の家で、開始時間は夕方なら18時くらいがいいかな。食べ物や飲み物はみんなで分担して最後に割り勘だね。それで姫の要望で、プレゼント交換をするってことで。それでいいかな? 何もなければ、今日のミーティングは終わりだね」
 准の言葉に、少年たちは異論はないと言わんばかりに頷く。
 そして思い思いに席を立ち上がり、各々帰る支度をするために自分の教室へ戻って行った。
 少年たちがBクラスの教室を出て行った後、眞姫はふと思い出したように前の席の准に声をかける。
「あ、そうだ。准くん、休んでる時のノートありがとう。すごく助かったよ」
「ううん、何てことないよ。役に立てたなら嬉しいよ、姫」
 優しい微笑みを眞姫に向け、准はそう言った。
 眞姫はそんな准に、言葉を続ける。
「ねぇ、准くんって明日学校が終わってからって何か予定ある?」
「え? 特にないけど、どうして?」
「准くんには休んでいる時いろいろやってもらったから、何かお礼がしたいなぁって。明日土曜日だから、学校も早く終わるし。准くんが都合よければ、何か奢らせて」
 眞姫の誘いに、准は少し意外そうな顔をした。
 だが、すぐに嬉しそうに笑顔を浮かて頷く。
「お礼なんていいのに。でも明日は都合ないし、せっかくだからどこか行こうか、姫」
「うん。何か食べたいもの、考えといてね」
 にっこりと笑って、眞姫は薄い桃色のマフラーを首に巻いた。
 そんな眞姫の表情は晴れ晴れとしていて、少年たちの仲が元に戻ったことを心から喜んでいるものだった。
 准はそんな眞姫を見つめてもう一度知的なその顔に微笑みを浮かべ、そしてコートを羽織って帰りの支度を始めたのだった。