6月23日・水曜日。
 この日の授業もすべて終了し、教室は帰りのホームルームを待つ生徒たちの声で溢れている。
 そんな賑やかな教室の雰囲気とは逆に、その少年・岡田秀一は俯いていた。
 放課後を待ちわびる教室の風景も、窓の外の雨音も、彼には届いてはいなかった。
 その虚ろな瞳に映っているのは……自分に向けられた、あの冷たい眼差し。
 中間試験の成績表を見せた瞬間、両親は床にそれを投げ捨て何も言わずに部屋から出て行った。
 価値のないものを見るかのような蔑みの視線を、一瞬だけ彼に向けて。
 残されたのは、床に捨てられた成績表と、彼の心の傷。
 そしてそれが憎しみに変わるまでに、時間はかからなかった。
 自分の中で、何かが囁く。
『邪魔な存在は消してしまえばいいだろう? 邪魔な存在は、すべて消してしまえばいいじゃないか』
 消してしまえばいい……そうだ、彼女たちさえいなければ。
 トップの成績さえとれば、パパもママもきっと僕のことを可愛がってくれるだろう。
 きっと、僕を愛してくれるに違いない。
 きっと……。
 頭痛のする頭を押さえて、岡田はぎりっと歯をくいしばった。
 その時だった。
「……くん、岡田くん?」
 岡田は、自分を呼ぶ誰かの声で我に返った。
「どうしたの? 何だか顔色がよくないみたいだけど、具合悪いの?」
 ハッと顔を上げた岡田は、一瞬言葉を失う。
 心配そうに声をかけてきた少女のその大きな瞳が、あまりにも澄んだ色をしていたから。
 自分に向けられている瞳から逃げるように視線を逸らし、そして岡田は言った。
「あ、清家さん……大丈夫だから」
「顔色、真っ青だよ? 無理はしない方がいいよ」
「…………」
 眞姫の言葉に、岡田は無言で俯く。


 僕の苦しみが、君に分かるかい?
 君がいなければ、僕はこんなに辛い思いはしていないんだ。
 君さえいなければ……君の存在さえなければ。
 ……僕は君にこんな感情を抱いているのに、どうして君はそんな瞳で僕を見るの?


 そんな次々と溢れ出る感情を必死で抑えようと、彼は机の下でギュッと拳を握り締めた。
 無言で俯く岡田に、相変わらず眞姫は心配そうな瞳を向けている。
 その時。
「どうしたの? 姫」
「あ、准くん。岡田くんが具合悪そうだったから」
「本当だ、顔が真っ青だね。大丈夫かい? 保健室まで付き添おうか?」
「芝草くん……いや、本当に大丈夫」
 近付いてきた少年の顔を確認して、岡田は俯いた。
 よりによって声をかけてきたのが、清家眞姫と芝草准……クラスでトップの成績を誇る、このふたりだなんて。
 そして僕は、その次。
 ずっと中学まで一番だった、この僕が……。
 再び胸が締め付けられるように、苦しくなる。
 眞姫の澄んだ瞳を、そして柔らかな准の微笑みを見るたび、余計に自分が惨めになる気がした。


 僕は、君たちが憎いんだよ?


 岡田はふっと、おもむろに顔を上げる。
 そして一瞬、その瞳に深い憎悪の色を浮かべたが。
「本当に大丈夫だから。心配してくれてありがとう、ふたりとも」
 岡田は、にっこりと笑顔を作ってふたりに向けた。
 そんな彼の様子に、眞姫と准は言った。
「それならいいけど……具合悪くなったら、遠慮なく言ってね」
「顔色良くないみたいだから、無理はしないようにね、岡田くん」
 それだけ言って、ふたりは自分の席に戻っていく。
 それと同時に、担任の鳴海先生が教室に入ってきたのが見えた。
 ガタガタと生徒たちが急いで席に着く中、岡田は口元に笑みを浮かべる。
「今はまだ……でも、邪魔者は消せばいいんだからな」
 先程よりも激しさを増した雨の風景に目を向け、そして彼は帰り支度をはじめたのだった。




 同じ頃。
「ねぇ、綾乃ーっ。今日さ、お茶して帰らない?」
 仲の良いクラスメートに声をかけられ、綾乃はにっこりと微笑む。
 そしてその誘いに応じようと頷きかけた、その瞬間。
 ふと綾乃は、その漆黒の瞳を細めた。
 それから鞄を小脇に抱えて席を立ち、言った。
「ごめーんっ、今日ちょっと都合悪いのよぉ。また今度ねーっ」
 屈託のない笑顔でクラスメートに手を振って、綾乃は教室を出る。
 放課後の女子校は、セーラー服姿の生徒で廊下も賑やかである。
 外は雨が本降りになり、余計に生徒たちを学校に留めさせていた。
 そんな中、廊下に出てた綾乃は、その足をピタリと止める。
「あら、もしかして気を使わせちゃったのかしら?」
 綾乃の姿を確認したその少女・つばさは、そう言ってふっと笑った。
 そんなつばさに、綾乃はにっこりと微笑む。
「つばさちゃんが学校で綾乃に会いにくるなんて、珍しいからねぇっ。もちろんデートのお誘いなんでしょ?」
「そうね、お茶でもして帰りましょうか? 綾乃」
 そう言って、つばさと綾乃のふたりは並んで歩き出す。
「あ、綾乃ちゃんは今日はケーキが食べたい気分だったりするんだなぁ、つばさちゃん」
「はいはい。綾乃の言うとおりにしましょ」
 肩の長さの髪をかきあげて、つばさは微笑む。
 胸のリボンの形をもう一度整えてから、綾乃はつばさの言葉に嬉しそうな表情を浮かべた。
 それから学校を出て、ふたりは繁華街の方へ足を運ぶ。
 綾乃のお気に入りのケーキ屋で落ち着いて、つばさはふと漆黒の瞳を彼女に向けた。
 その視線に気がつき、綾乃は意味ありげに笑う。
「それで……綾乃ちゃんに、何か聞きたいことでもあったりするのかなぁ? つばさちゃん」
「あなたがこんなに仕事熱心だったなんて、私びっくりしてるのよ?」
 くすっと笑って、つばさはひとくち紅茶を飲む。
 そんなつばさを後目に、綾乃はテーブルに頬杖をつきながら再びメニューに視線を向ける。
「あー、こっちのケーキにすればよかったかなぁ。これ美味しそうじゃなーい? ね、つばさちゃんっ」
「どうせ二個食べるんでしょ? 今日はゆっくりお茶に付き合ってあげるから、綾乃」
「あははーっ、何ならパフェも食べたいんだけどねっ」
「いつも思うけど、よくそんなに甘いものばかり食べられるわよね」
 はあっと溜め息をついて、つばさは呆れたように綾乃を見た。
 綾乃はそんなつばさに微笑んでから、ふっと瞳を細める。
「ていうか、綾乃よりもつばさちゃんの方がずーっと仕事熱心だと思うんだけどぉ?」
「私? 私は、杜木様のお役に立つことが生き甲斐だから。綾乃こそ、巫女姫様と能力者に会ったみたいじゃない?」
「たまたまね、綾乃の幼馴染みのお友達が眞姫ちゃんだったんだぁ。もちろん、バッチリ能力者くんも隣についてたけど、本当に偶然でさぁ、面白かったよぉっ」
 そう言って、綾乃は楽しそうな表情を浮かべる。
「巫女姫様と、彼女に付いている能力者、ね」
 そんな綾乃の言葉に、何かを考えるようにつばさは呟く。
 きゃははっと笑いながら、綾乃は続けた。
「能力者の彼ともねぇ、もうすっかり仲良しになったしっ。ていうか、結構いい男なんだぁ」
「でもどんなにいい男でも、杜木様に敵う人はいないもの」
 興味なさそうにつばさがそう言った時、店員がケーキを運んでくる。
 嬉しそうに目を輝かせ、綾乃はそのチョコレートケーキを美味しそうに口に運んだ。
 それから紅茶をひとくち飲んで、改めてつばさに目を向け、言った。
「あ、でもね、心配はいらないよ? 彼とはいいお友達だけど……綾乃ちゃんはちゃーんと、お仕事の時は割り切れるタイプだからねーっ」
「それはよく知ってるわ、綾乃。杜木様も褒めていらっしゃったわよ? 味方だと、こんなに心強くて安心して見ていられる子はいないって。逆に敵にはしたくないタイプだとも、ね?」
 そんなつばさの言葉に、綾乃はにっこり笑みを浮かべる。
「杜木様に褒められちゃったっ。ていうか、私が杜木様の敵に回るなんて、何が起こってもあり得ないしっ。なんてったって綾乃ちゃんは、杜木様親衛隊だからぁ」
「あら、言っておきますけど、杜木様は私のものよ? 綾乃」
 くすっと笑い、つばさはチーズケーキをひとくち口に運ぶ。
 それから、改めてふと表情を変えて、言った。
「そうそう……あと、綾乃が目をつけて“契約”させた“憑邪”の様子はどんな感じかしら?」
「あー、それねぇ。何かそれなりに眞姫ちゃんにちょっかいかけてるみたい。ま、あの程度の“憑邪”なら、すぐ能力者に退治されちゃうでしょーけど」
 あっさりそう言って、綾乃は2個目のケーキを選ぼうとメニューと睨めっこしはじめる。
 イチゴショートにするかミルフィーユにするか悩んでいる綾乃に、つばさは改めて目を向けた。
「そうね、所詮“憑邪”ですものね。派手に行動を起こしてくれれば、少しでも巫女姫様の眠っている力を刺激して都合がいいんだけどね」
「ま、そんなに期待はしてないけどっ。あの“憑邪”が何か大きく行動を起こしそうな時は、綾乃ちゃんも是非見物しよーとは思ってるけどさぁ」
 チョコレートケーキの最後のひときれをパクッと口に運んで、綾乃は無邪気に笑う。
 そして店員にイチゴショートのオーダーを追加したあと、瞳にかかる漆黒の髪をかきあげた。
 そんな綾乃に、つばさはふとその瞳を細める。
 そして声のトーンを変え、言った。
「ところで綾乃。例えばあなたと、そのお友達の“能力者”が対峙することがあったら……どうなるのかしら?」
 くすっと笑うつばさに、綾乃は自信と誇りに満ち溢れたその瞳を向けた。
「んー、そうねぇ。確かに、彼の纏ってる“気”の感じは大きなものだったけど……」
 綾乃はそこまで言って、一旦言葉を切る。
 それからにっこりと微笑んで、続けた。
「でも、あの程度じゃ、まだ綾乃ちゃんの敵じゃないよ? つばさちゃん」
 強い光を宿す彼女の瞳を見ながら、つばさはその言葉に瞳を細める。
 そして満足そうに、その口元に笑みを浮かべたのであった。




 どしゃぶりになってきた外の景色を見ながら、准はひとり図書館にいた。
 相変わらず図書館は静かで、雨音が一層耳に聞こえる。
 人もまばらな館内をぐるっと一周見回してから、准は窓際の席に鞄を置いた。
 それから目当ての資料を探すために、閲覧のみの本が並ぶ奥の資料室に足を運んだ。
「えっと、明日の授業でやるところは……このあたりかな」
 そう小声で呟いてから一冊の本を手にとり、おもむろにページをパラパラとめくってみる。
 そして何冊か目ぼしい本を選んだ後、准は席に戻ろうと一歩足を踏み出そうとした。
 ……その時。
 准はふと顔を上げ、その表情をおもむろに変える。
 それから、注意深く周囲に視線を向けた。
 相変わらず館内は静かで、降り続いている雨の音だけがその耳に聞こえている。
 だが……先程までの静けさと、明らかに違っていた。
 異様なくらいに、静か過ぎるのだ。
 そしてその理由が、准には分かっていた。
「…………」
 周囲に張られた“結界”に気付き、准は険しい表情を浮かべた。
 空間を漲る“邪気”に顔を顰めながらもふっと軽く身構え、とりあえず“結界”を張った張本人が動きをみせるのを、准はじっと待った。
 誰が何の目的で自分を“結界”に閉じ込めたのかは分からないが、“結界”を漲る“邪気”は重々しいものだ。
 そんな殺気に近い“邪気”からして、明らかに自分の敵である何者かが、この“結界”を作り出していることは間違いないようだ。
 ゆっくりと歩を進めながらも、准は神経を“邪気”の流れに集中させた。
 数秒の静寂が、館内を包み込む。
 そして。
「!!」
 空気の変化を感じ取り、准はハッと目を見開いた。
 それと同時に、ドオンッと大きな衝撃音があたりに響く。
 すぐ横の大きな本棚がいとも簡単に倒れ、収納されていた本が床に散らばった。
 ……一冊の分厚い百科事典が、突然すごい勢いで准目がけて襲い掛かってきたのだった。
 咄嗟に身を翻してそれをかわした准は、次の攻撃に備えて体勢を整える。
「姫を狙っている、同じ“憑邪”か」
 自分を狙った百貨事典がフワフワと宙に舞うのが見え、准はそう呟いた。
 先日の部活での鳴海先生の話では、眞姫を狙う“憑邪”は念動力のような力を使うと言っていた。
 今のこの状況からして、まず同じ“憑邪”の仕業であることは間違いないと、准は確信した。
 そんな准に狙いを定めるかのように、浮いている本が左右に不安定に揺れている。
 そして次の瞬間、“結界”内の“邪気”が大きくなるのを感じた。
「くっ!」
 ビュッと、空気を裂くような音が鳴る。
 再び攻撃を仕掛けてきたそれを避け、准は近くの大きな本棚の裏側に身を隠した。
 ドカッという大きな音がしたかと思うと、准がさっきまでいた場所の床にその直撃で生じた衝撃痕ができている。
 そんな様子にも動じず、准は改めて周囲の空気の流れに神経を集中させる。
 “気”を使って“邪気”に応戦することは簡単だが、あえて准は、まだその力を使わないでいた。
 まずは、その“憑邪”の正体をつきとめたかったからだ。
 “気”の力をもってすれば、その“憑邪”を消滅させることができる。
 だが、その背後に“邪者”の存在があるかもしれないことを考えると、しばらく様子を見ることが良策だと、そう判断したのだ。
 そんな准の考えをよそに、今度は床に散らばっていた多数の本たちが次々と宙に浮かぶのが見える。
 それを怪訝な視線で見つめながら、准はふうっとひとつ息を吐いた。
 ……その時。
「!!」
 宙に浮かび上がった本たちが、一斉に准が身を隠している本棚目がけて突っ込んできた。
 今までで一番激しい音が館内中に響き渡る。
 数十冊もの数え切れない事典や文献が、容赦なく本棚に直撃したのだ。
 そして本たちの繰り出す衝撃に耐えられず、あっけなく本棚は音を立てて倒れた。
 最後にもう一度ドオンッと衝撃音がして、そして分厚い本の山がその場に出来上がる。
 衝撃の余波が立ち込めた後……再び静寂の戻ってきた館内で、ひとりの少年は笑った。
「本の下敷きになったか?」
 そう言って、その少年・岡田秀一はニヤリと笑みを浮かべる。
 そして本の山に埋もれているだろう准の姿を確認しようと、一歩足を踏み出した。
 その時だった。
「……姫を狙っていた“憑邪”は君だったのか、岡田くん」
「! なっ!?」
 突然背後から聞こえてきた声に、岡田は驚いたように振り返る。
 いつの間に移動したのか、そこには険しい表情を浮かべる准の姿があった。
 そして岡田をじっと見据え、准は言葉を続けた。
「残念だったね。実は僕も、こういう力が使えるんだよ」
 スッと准が瞳を閉じた瞬間、その身体全体に眩い“気”の力が宿る。
 その大きな光に驚いて、岡田は数歩後ずさりをした。
 そしてクッと唇を噛んで、右手に“邪気”を漲らせる。
 床に散乱している本が、再び宙に浮いた。
「芝草くん、君と清家さんには……悪いけど消えてもらうよっ!!」
 岡田のその声と同時に“邪気”が弾け、准目がけて攻撃が繰り出される。
 そんな、自分に襲い掛かからんとする本に臆することもなく、准は言った。
「……いくら攻撃を仕掛けても、無駄だよ」
「!!」
 次の瞬間、カァッと眩しい光が弾け、准の作り出した“気”の防御壁に阻まれた本が浮力を失い、次々と床に落ちる。
 すべての本の攻撃を防いでから、准は静かに口を開いた。
「岡田くん、今日のところは見逃してあげるよ。ただ……今度姫に手を出したら、容赦なく君を消滅させるからね」
「くっ!!」
 ゆっくりとした口調でありながらもその准の言葉に圧倒され、岡田は周囲の“結界”を解いた。
 途端に目の前に、まばらながらも読書に興じる人たちの姿が現れる。
 岡田は一瞬だけ准に憎悪の瞳を向けて、そして逃げるように図書館の外に駆け出していった。
 准はそんな彼の後姿を見送ってから、視線をすぐ隣で本を読んでいる少年に移す。
「手を貸そうかとも思ったんだけどね、大した“憑邪”でもないし。それに君が何かを考えているみたいだったから、見物させてもらっていたよ」
 読んでいる本から目を離さず、その少年・詩音はそう言った。
「彼を……“憑邪”を消滅させることはすぐにできたけど、その背後にあるものの正体が、まだ分かってないからね」
 いつもの知的な笑顔を詩音に向け、准は彼の隣に座った。
 本からようやく顔を上げ、詩音はくすっと笑う。
「君は心優しい騎士だからね。さっきの彼は、君のクラスメートだろう?」
「……別にクラスメートだから見逃したわけじゃないよ。もちろん、人を傷つけずに解決できるのであれば、それに越したことはないけど」
 そこまで言って、准はふと言葉を切る。
 それから顔をあげ、ゆっくりと続けた。
「たとえ誰でも、姫に危害を加えるものは……僕は許せないからね」
 詩音はその言葉を聞いて、ふっと柔らかな微笑みを浮かべる。
「でも今回の“憑邪”のターゲットは、どうやら姫だけではないらしいじゃないか、准」
 その言葉に、准は俯く。
 ……自分に向けられた、彼の憎悪の瞳。
 そして、彼の言葉。
『君と清家さんには、悪いけど消えてもらう』
 准は改めて顔を上げて詩音に目を向け、言った。
「僕のことよりも、姫のことが心配だよ。それに“憑邪”のターゲットであることだって、考えようによっては逆手に取れるんじゃないかな」
「そうだね。今日のことで、もうこちらも動かずにはいられないだろうしね」
 まだ降り続いている雨の音に合わせるように指を動かしながら、詩音は言った。
 彼の頭の中では、無意識的にいつも譜面が書かれているのだろう。
 准はそんな詩音を後目に、ひとつ溜め息をつく。
 そして、何かを考えるようにふと俯いたのだった。