32. 見つけてEMBRACE


 ――賑やかだった職員室とはうって変わり、授業のない終業式の日の特別教室校舎はいつも以上にとても静かだった。
 美紅は彼とともに、ある特別教室のひとつに足を踏み入れる。
 そして、ゆっくりとドアを閉めた。
「美紅」
 自分を呼ぶ彼のその声に、美紅はふと顔を上げる。
 同時に彼女の目に映るのは。
 王子様のような、彼の優し気な微笑み。
 彼――早瀬とともに、美紅は数学教室にやって来ていた。
 美紅は早瀬と話をしようと、彼がいるだろう職員室に足を運んだ。
 そして、自分のデスクで仕事をしていた早瀬を見つけた。
 だが、話の内容が内容なだけに、人の多い職員室ではさすがに話ができない。
 早瀬も美紅が自分に何の用事があるのか分かっていた。
 そのために早瀬と美紅は、ふたりきりになれるこの数学教室に場所を移したのだった。
 早瀬は敢えて話を急かさず、美紅が口を開くのをじっと見守っている。
 美紅はそんな彼に小さく微笑みを返してから、ふっとひとつ深呼吸をした。
 それから、こう話を切り出したのだった。
「何だか早瀬先生とふたりきりになるのって、すごく久しぶりな気がする」
「そうだね。ここ数日は、学校でしか会っていなかったからね」
 早瀬はそう言った後、ブラウンの前髪をそっとかき上げる。
 そして、柔らかな声でこう続けた。
「でも、美紅とふたりで会っていなかったこの数日間……すごく、寂しかったよ」
「早瀬先生……」
 美紅は教室内に響くその声に、漆黒の瞳を細める。
 自分の大好きな彼の穏やかな声。
 その声で優しい言葉を掛けられるたび、名前を呼ばれるたびに。
 自分はすごく幸せな気持ちになるのだ。
 だが今回、答えがはっきりと出るまで、美紅は早瀬とも遥河とも少し距離を置いていた。
 いや、意識してそうしていたというよりも。
 ふたりと話をする余裕が、全く美紅にはなかったのである。
 そしてそんな彼女の気持ちを察し、早瀬も遥河も必要以上に美紅に何か言うこともしなかった。
 一時は、信じ難い真実に混乱していた美紅だったが。
 悩みに悩んだ結果……ようやく、自分なりに納得できる答えに辿り着くことができたのである。
「早瀬先生」
 美紅は意を決したように顔を上げ、彼に視線を向けた。
 それから自分の出した答えを言葉にし始めたのだった。
「あの日先生たちから聞いた話はすごく驚いたし、最初はいろんな事情があって早瀬先生は私と付き合い始めたのかもしれないけど……でも先生は私にすごく優しかったし、一緒にいると幸せだった。だから私の、早瀬先生のことが好きっていう気持ちは今でも変わらないよ」
「美紅、じゃあ……」
 早瀬は美紅の言葉に、ホッとしたように笑みを宿す。
 これでもう十中八九、自分の思った通りの答えが返ってくるだろう。
 レースに勝ってゴールテープを切るのは誰でもない自分だと。
 そう早瀬は確信し、美紅に一歩近づく。
 ……だが、その時。
 美紅は早瀬に真っ直ぐ視線を向けたまま、さらにこう続けたのだった。
「でもね、いろいろ考えたんだけど……私たち、別れた方がいいって思ったの。だから、先生のプロポーズも受けることができません」
「え? ……美、紅?」
 思いもよらない彼女の返事に、早瀬はブラウンの瞳を見開く。
 それから大きく首を振り、彼女に訊いた。
「美紅、どうして……さっき美紅は僕のことを、今でも変わらず好きだと言ってくれただろう? なのに」
「私は早瀬先生のことが好き。先生も私のことを大切に想ってくれてるって分かってる。でもね、早瀬先生が本当に好きなのは、私じゃないから」
「僕が本当に好きなのは美紅じゃない、だって?」
 早瀬はその言葉を聞いて、ふっと苦笑する。
 そして彼女の両肩に手を添えて言った。
「もしかして、遥河の言っていたことを真に受けてるのかい? 僕が、香澄のことを好きだなんて言っていたことを。でも僕は香澄じゃなくて、君に結婚を申し込んだんだ。そうだろう?」
 美紅は漆黒の瞳を伏せ、一瞬俯く。
 だがすぐに顔を上げると、再び口を開いた。
「ううん、遥河が言ってたからじゃないの。最初に先生と香澄さんが話しているのを見た時、直感っていうか……すごく、不安な気持ちになったんだ。最初は、ふたりは昔恋人同士だったのかもしれないとか、もしかしたら香澄さんが先生の浮気相手なのかもしれないってまで正直疑った。でもそれは私の誤解だった。先生と香澄さんは私の疑っていたような仲じゃなくて、学生時代の友人なんだって分かったわ。でも、それは分かったけど……私の直感は、ある意味間違ってなかったの」
「間違ってなかったって……」
 早瀬の顔からは、先程までの余裕の色はすっかり消えていた。
 何を言っているんだ。
 自分のプロポーズを受けることに、何の問題があるのだと。
 そう言いたい気持ちを抑え、早瀬は美紅を見つめる。
 美紅は少しだけ寂しそうな表情を浮かべて早瀬に視線を返した。
 そして、言った。
「先生と香澄さんは、確かに友達同士だけど……ふたりの関係云々の問題じゃなかった。もっと根本的で、そしてもっと大切なところにあったの。それは早瀬先生の気持ちが、私じゃなくて香澄さんにあったってこと。先生のことを見ていて……それが直感的に分かったんだ」
「美紅。さっきも言ったけど、僕は香澄じゃなくて君にプロポーズをしたんだよ。あの話を聞かれた時も言ったように、僕は美紅のこと、とても大切に想っている」
 早瀬は美紅を何とか説得しようと言葉を掛ける。
 だが美紅はそんな早瀬に、大きく首を振った。
 それから漆黒の瞳に涙を溜め、こう続けたのだった。
「先生が私のことを大切に想ってくれてるのは、すごくよく分かってるよ。でもね、先生が本当に好きなのは香澄さんだって、気がついちゃったんだ。先生があの時言った……“美紅のことはちゃんと好きだよ、美紅の笑った時の目が香澄のものによく似てるんだ”って言葉で。それを聞いた時、ああ早瀬先生はやっぱり香澄さんのことが好きなんだなって」
「…………」
 早瀬は美紅のその言葉に何も言い返せず、思わず言葉を切ってしまう。
 そんなことを言っていたなんて、全く無意識だった。
 確かに母親が違うとはいえ、姉妹なだけあり、美紅と香澄はどこか似ているところがあると以前から思っていた。
 それに学生時代、美紅の言うような恋愛感情を香澄に持っていたことも事実だが。
 でも香澄はかけがえのない大切な存在ではあるが、決して一緒にはなれない人だと。
 彼女が持病で倒れ、ひとりで生きていくと自分に告げた時。
 それまで彼女に抱いていた恋心を、自分は完璧に心の奥底へ封印したはずだった。
 その後は恋や愛などではなく、良き友人として彼女のことを支えていこうと思っていたのに。
 でも、昔も今も……ずっと変わらず、自分は香澄のことを愛していたのだ。
 そして、それを気付かせてくれたのは。
 愛する女性と同じ印象の瞳を持つ、まだ幼い少女。
 今にも落ちんとせん涙を必死に堪えるその健気な姿。
 早瀬はブラウンの瞳をふっと細め、そっと美紅の髪を撫でた。
 それから華奢な彼女の身体を抱き寄せ、ゆっくりと口を開いたのだった。
「美紅……ごめん」
 早瀬の胸の中で、美紅は左右に首を振る。
 それと同時にその瞳から涙が溢れ始め、頬を伝った。
 美紅は泣き顔を見せまいと、彼の胸に顔を埋める。
 そして手のひらで涙を拭きながら早瀬に言った。
「謝らないで、先生。でも……ひとつだけ、早瀬先生にお願いがあるの」
「お願い? 何だい、美紅」
 早瀬は長い指で彼女の涙を拭った後、小さく首を傾げる。
 そんな早瀬を涙でいっぱいの瞳で見上げ、美紅はあることを彼にお願いしたのだった。
 その内容を聞き、早瀬は綺麗な顔に笑みを宿してコクリと頷く。
 美紅はもう一度涙を拭いてから、彼に精一杯の笑顔を返す。
 そして彼から離れ、一歩数学教室のドアへと歩を進めた。
「じゃあ、早瀬先生。私……行くね」
「美紅……」
 早瀬は自分に背を向ける美紅をじっと見つめながら、ブラウンの前髪をそっとかき上げる。
 ……自分の思い描いていたものと、現実は違ったが。
 自分の向かうべきゴールは、また別の違うところにあるのだと。
 それを気付かせてくれたのは、誰でもない美紅である。
 彼女に言った言葉に嘘はなかった。
 美紅のことは好きだったし、大切には思っていた。
 それにやはり美紅は、自分の思っていた通り頭の良い子だった。
 ひた隠しにしていた自分の気持ちを敏感に感じ取り、そして下すべき決断は何なのか。
 決して感情だけに流されず、たとえ今は辛くても最善の答えが何であるか、彼女にはきちんと分かったのだった。
 そしてまだ幼い美紅にそんな思いをさせてしまった自分の行動に、早瀬は胸が痛む。
 遥河や香澄の本当の父親である和彦に対しては複雑な感情があったが。
 美紅は、ただ巻き込まれただけである。
 だから……彼女から頼まれた、最後のお願い。
 そのことだけは、責任をもって果たそうと。
 それが自分にとっての新たなゴール地点でもあるし、美紅への償いにもなるのだから。
 早瀬はパタンと閉まった数学教室のドアを見つめながら、そう心に誓う。
 そして綺麗な顔に小さく笑みを宿し、ふっと息をついた。
 ……そんな王子様のように柔らかな彼の表情には。
 偽りの色は、一切なかったのだった。
 
 
 ――早瀬に別れを告げ、数学教室を出た美紅は。
 教室でも靴箱でもない、ある場所へと足を向けていた。
 そんな彼女の手に握られていたのは、携帯電話。
 美紅は涙で滲む視界を振り払うかのように瞳を手の平で擦った後、携帯電話の画面に目をやる。

『約束の日だ、答えを聞かせろ。英語教室で待つ』

 漆黒の瞳に映るのは、そんな素っ気無い短いメール。
 美紅はそのメールの通り、英語教室へと向かっていたのだった。
 そして、そのメールの送り主は……言わずもがな。
 美紅は気持ちを落ち着かせるようにひとつ深呼吸をした。
 早瀬の前では気丈に振舞っていた美紅だったが。
 本当の気持ち、彼女は早瀬のことがまだ好きだった。
 だが本当は香澄のことが好きであろう早瀬を見ていて、自分が身を引くべきだと。
 そう、決断した。
 いっそ目を瞑って、早瀬のプロポーズを受けてしまおうかとも考えたこともあったが。
 それではまた後々自分が辛くなるだろうし、早瀬のことが好きだからこそ、彼には素直な気持ちになってもらいたかったのである。
 だが……まだ大人になりかけの美紅にとって、自分の決めたその答えはあまりにも辛すぎて。
 気持ちが少しでも緩むと、ガタガタと崩れ落ちてしまいそうだった。
 でも、まだ終わっていない。
 美紅はグッと拳を握り締め、目の前の英語教室のドアをノックする。
 それから意を決したように顔を上げると、そのドアを開けたのだった。
 そして――広い英語教室にいたのは、もちろん。
「…………」
 自分に向けられる、神秘的な漆黒の瞳。
 いつからここでコイツは待っていたのだろうか。
 そう思いつつも美紅は、視線を彼――遥河俊輔に向けた。
 遥河はやって来た美紅を見て、ふっと笑う。
 それから、普段と何ら変わらない調子で言った。
「何だ、おまえ。今、自分がどんな顔してるか分かってるか? めちゃめちゃブサイクな顔してるぞ」
「なっ……ブサイクってっ」
 ムッとしつつも、美紅は遥河に数歩近づいた。
 確かに泣き止んでいるとはいえ、今自分の顔は涙でぐしゃぐしゃかもしれないが。
 相変わらず緊張感も何もあったものじゃない。
 こっちは今、好きな恋人と別れてきたばかりだというのに。
 それなのに何てこと言うんだ、この男は。
 そう……思いつつも。
 美紅はグッと唇を噛み締め、今にも再び溢れ出しそうな涙を必死に堪える。
 また泣いてしまったら……涙を止める自信が、もう自分にはないから。
 遥河はふっと息をつき、座っていた椅子から立ち上がる。
 それからスタスタと美紅の元へと歩みを進め、言った。
「おまえ、この俺が言ったこと忘れたか?」
「……え?」
 美紅はその言葉に顔を上げる。
 その瞬間、思わずドキッとしてしまった。
 早瀬とは全く正反対の印象ではあるが。
 自分だけを真っ直ぐに映す、遥河の神秘的な両の目。
 吸い込まれそうなその深い黒の瞳に、美紅は一瞬だけ動きを止める。
 そして、そんな美紅を。
 遥河はぎゅっと抱きしめてから、耳元でこう続けたのだった。
「言っただろう? 泣きたい時は泣けばいい。我慢しなくていいってな」
「……っ」
 美紅は耳をくすぐるその囁きに、心がグラリと揺らぐような感覚をおぼえる。
 決して早瀬のように柔らかで優しい印象は一見感じない、その声だが。
 何故だろうか、こんなに心地良いと感じてしまうのは。
 それと同時に、自分の意思とは関係なく。
 今まで我慢していた感情が、一気に涙となって溢れ出す。
 美紅は流れる涙を拭うことも忘れ、遥河の広い胸の中で思い切り泣いた。
 遥河はそんな美紅に何も言わず、ただ華奢な彼女の身体を受け止め、大きな手の平でその頭を撫でていた。
 英語教室に現れた美紅を一目見て……いかにも泣きましたと言わんばかりの美紅の顔を目にした、その時。
 遥河には、美紅がどういう決断をしたのかが分かったのだった。
 きっと自分の気持ちを抑え、早瀬に別れを告げたのだろうということが。
 そしてそんな彼女を目の前にし、思ったことはたったひとつ。
 早瀬とのことや、自分の告白の結果なんて、どうでも良くなった。
 ただ……早く、いつもの美紅が見たいと。
 今まで我慢していた気持ちを早く吐き出して、そしていつものように自分にムキになって言い返す、そんな彼女の姿を見たいと。
 遥河はそう思ったのだった。
 それから――しばらく、泣いた後。
 遥河に身体を預けたまま、美紅はポツリと呟いた。
「……あんたなんて、大嫌い」
 遥河は敢えて何も言葉を返さず、じっと美紅のことを見守っている。
 まだ少し潤んだ瞳で遥河を見上げてから、美紅は再び口を開いた。
「口は悪いし嫌味ったらしいし、自分勝手だし、強引だし。挙句、傷ついて泣いてる女の子にブサイクとか言うし。本当にデリカシーのカケラもないんだから。それに……」
 美紅はそこまで言って、一旦言葉を切る。
 それからふいっと視線を遥河から逸らし、続けた。
「それに一番タチ悪いのは、たまにすごく優しいところ……本当に、最悪」
 美紅のその言葉を聞いて、遥河はふっと笑う。
 それからスッと美紅の顎を軽く持ち上げ、自分の方を向かせた。
「何だ、おまえ。この俺に惚れたか?」
「なっ、何言ってんのよ。何で私がアンタなんかにっ」
 整った遥河の顔がすぐ近くにあることに気がつき、美紅はカッと顔を赤らめる。
 遥河はそんな素直な美紅の様子を見て、笑みを浮かべた。
「そう照れるな。まぁ俺もおまえのことが好きだからな、両想いってヤツでちょうどいいじゃねーかよ」
「は? 両想いの意味、分かって使ってるの? ったく、勝手に都合のいいように脳内変換しないでよね」
 美紅はそう言いつつも、ようやくその顔に笑顔を取り戻す。
 本当に自己中心的というか、俺様というか。
 でも……そんな遥河のことが、何故か嫌いになれない。
 いや、嫌いどころか……。
「美紅」
 遥河はふと短く彼女の名を呼ぶ。
 その声に、美紅は再び視線を彼へと戻した。
 遥河は大きな手の平で美紅の頬を優しく撫でた後、囁くように彼女に言ったのだった。
「この俺と付き合え。この俺が……早瀬なんかのこと、3秒で忘れさせてやる」
「え? ……! ん、っ」
 美紅はその瞬間、思わず大きく瞳を見開く。
 それからすぐにスッと瞳を伏せ、急に与えられた遥河の唇を受け入れた。
 それは、甘くて優しいキス。
 普段はどうしようもなく自分勝手で、頭にくる言動ばかりだけど。
 遥河が自分に与えるキスや抱擁は……不思議なほど、あたたかくて優しい。
 そしてそれは、自分のことを誰よりも大切に想ってくれているという、遥河の気持ちの表れ。
 危うく、見逃すところだったけれど。
 美紅はようやく自分を癒してくれる、あたたかい抱擁を見つけたのだった。
 正直、まだ早瀬のことを吹っ切れているわけではない。
 でも……自分は、ひとりじゃない。
 こうやって支えてくれる人が、自分のことを一番に想ってくれる人が、すぐ近くにいるのだから。
 美紅は彼の唇が自分のものから離れた後、ふっと笑みを浮かべる。
 そして、悪戯っぽく言ったのだった。
「ていうかね、付き合えじゃなくて付き合ってください、でしょ? それが人にモノを頼む態度? まぁアンタがそういうなら、付き合ってやってもいいけど」
「あ? ブサイクな顔でビービー泣いてるおまえなんて、この心の広い俺以外の誰が拾ってやるってんだ? おまえこそ有難く思え」
「ブサイクってね……悪かったわねっ」
 ふいっと拗ねたように顔を背ける美紅に、遥河は漆黒の瞳を細める。
 それから再び強引に美紅の顔を自分の方へと向かせ、ニッと笑った。
 そして神秘的な瞳をスッと閉じ、彼女の耳元で囁く。
「美紅……愛してる」
 ゾクリと鳥肌が立つほどの、低い響き。
 美紅は吹きかかる吐息の気持ちよさに微かに身を震わせて遥河を見つめ、そっと瞳を閉じた。
 遥河はそんな彼女の唇に、再び柔らかな接吻けを落とす。
 それから美紅の身体をしっかりと、その胸に抱きしめたのだった。

      

 ふたりにとって今日という日は、ゴールではなく、新しいスタートの日。
 そしてスタートではあるが、それは決して競い合うレースなどではなく。
 一緒に歩調を合わせ、時には立ち止まったり喧嘩したりもしながら。
 ふたりなりのゴールを見つけ、目指していくということ。
 いつか……見事にゴールテープが切られる日が来ることを、信じながら。