Sacred Blood 七夕企画





 ホームルームが終わった、放課後。
 掃除当番だった眞姫は担当の特別教室の掃除を済ませ、2年Bクラスに戻っている途中であった。
 眞姫は栗色の髪をそっとかき上げながら、すれ違う同級生たちに手を振って軽く挨拶を交わす。
 それからふと振り返って、ひとりの少年に声を掛けた。
「あ、祥ちゃん」
「おー、めっちゃカワイイ子がおるなーって思ったら、愛しのお姫様やん」
 同じように教室に戻る途中だった祥太郎は眞姫の隣に並び、そしてふたりは一緒に賑やかな放課後の廊下を歩き出した。
 眞姫は隣を歩く祥太郎を見て、言った。
「今日って七夕だよね」
「そういえば、今日は七夕やったな。こんなカワイイ織姫様と再会できて、ハンサムひこ星くんは嬉しいわ」
 さり気なく眞姫の手を握り、祥太郎は調子よくそう言って笑う。
「祥ちゃんったら、口が上手なんだから」
 祥太郎の言葉にくすくすと笑った後、眞姫はふと天を仰いだ。
 そして、少し心配そうに口を開く。
「でも今日って晴れてはいるけど、結構雲が多いでしょ? 曇ったり雨が降ったら、織姫とひこ星が会えないよ。会える機会は一年に一回なのに」
「そうやなぁ、今日天気予報でも、天の川見えるかは微妙って言ってたからな。お洗濯指数は高かったんやけどな」
「ふふ、お洗濯指数のチェックは欠かせないからね、祥ちゃん」
「モチロンや。俺ってば、主夫の鑑やからな。いつでも嫁に行けるで」
 祥太郎は屈託なく笑う眞姫の様子に満足したように、ふっと瞳を細める。
 眞姫はそんな祥太郎を改めて見上げ、それからこう訊いたのだった。
「ねぇ、祥ちゃん。祥ちゃんがもし、ひこ星だったらどうする? 好きな人と、一年に一回しか会えなかったら」
「うーん、そうやなぁ」
 その問いを訊いて、少し祥太郎は考える仕草をする。
 それから、彼女にこう答えた。
「まぁ、一年に一度しか会えんのは寂しいけどな、決まりやったら仕方ないな。障害のある恋も燃えるっちゅーもんやし。毎日てるてる坊主せっせと作って、男磨いて、七夕に備えるかな」
「毎日てるてる坊主か。それだったら、七夕の日は毎年きっと快晴だね」
 いつもは軽口を叩いているが、根は真面目でコツコツ堅実な彼らしいその答えに、眞姫は微笑む。
 祥太郎は眞姫の笑顔を見つめ、ハンサムな顔に笑みを浮かべる。
 それから、こう言葉を続けたのだった。
「でもやっぱり、ひこ星やなくてよかったわ。好きな人と一年も会えんなんて、考えるだけでもツライからな」
「そうだね、好きな人とは一緒にいたいよね」
「よかったわ、俺はいつでもカワイイ織姫にこうやって会えるからなぁ」
 祥太郎はにっこり微笑み、眞姫の肩をポンポンッと軽く叩く。
 眞姫はそんな彼の言葉に、再び楽しそうにくすくす笑い出した。
「もう祥ちゃんって、本当に口が上手なんだから」
「いや……実はめっちゃ何気に本気なんやけど」
 小さくそう呟き、祥太郎は思わず小さく嘆息する。
 それから気を取り直して眞姫に向き直り、訊いた。
「そういえば、姫は短冊にどんな願い事書くんや?」
「私? いろいろお願いしたいことはあるんだけどね。祥ちゃんは?」
 逆にそう訊かれ、祥太郎は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
 そしてさり気なく眞姫の肩を抱き、言った。
「俺はもちろん、お姫様とラブラブデートできますように、ってな。あ、今度このハンサムひこ星くんと、天の川までデートせえへん? カワイイ織姫様」
「天の川デート? ふふ、でももう七夕終わってるよ、その時」
 眞姫はくすくす笑い、栗色の髪をそっとかき上げた。
 祥太郎は自分の隣で笑う眞姫を見つめ、幸せそうに優しく微笑む。
 そして、そっと彼女の栗色の髪を撫でたのだった。
 そんな祥太郎の本当の願いは――いつまでも自分の隣で自分のためだけに、お姫様が楽しそうに笑ってくれること。