Sacred Blood 七夕企画





 2年Bクラスの教室を出た眞姫は、靴箱で靴を履き替えていた。
 それから、ちらりと腕時計を見る。
 そして、靴箱をパタンと閉めた。
 その時。
「姫、今から帰るのか?」
 ふとそう声を掛けられ、眞姫は振り返る。
 そして、その相手を確認してにっこりと微笑んだ。
「あ、健人。うん、今から帰るところよ」
 偶然眞姫と靴箱で一緒になった健人は、ほかの少年の姿がないことを確認すると、絶好の機会とばかりに言った。
「姫、一緒に帰ろう」
「うん、一緒に帰ろうか」
 眞姫は素直に健人の言葉に頷く。
 それからふたりは学校の校門を抜け、ゆっくりと繁華街の方角に歩き出した。
「今日って七夕だよね。少しやっぱり雲多いけど、天の川見えるかな」
「七夕か。そういえば、7月7日だな」
 健人ははじめて気がついたように、そう口を開く。
 眞姫はそんな健人の言葉にコクンと頷き、そして少し心配そうに言った。
「今日って晴れてはいるけど、結構雲が多いでしょ? 曇ったり雨が降ったら、織姫とひこ星が会えないよ。会える機会は一年に一回なのに」
 眞姫らしいその言葉に、健人は思わずその綺麗なブルーアイを細めた。
 そんな健人にふっと向き直り、そして眞姫は訊いたのだった。
「ねぇ、健人。健人がもし、ひこ星だったらどうする? 好きな人と、一年に一回しか会えなかったら」
「好きな人と、一年に一回しか会えなかったら……」
 健人はそう呟き、眞姫をじっと見つめる。
 そしてポンッと彼女の頭に手を添え、眞姫の問いにこう答えたのだった。 
「俺だったら、一度会ったら二度と織姫を離さない。愛し合っているふたりが離れるだなんて、俺には耐えられないからな。強引にでも、俺の元に連れていくよ」
「ふふ、健人らしいね。結構、健人って情熱的だもんね」
「情熱的か? でも当然のことだろう? 好きなやつと、ずっと一緒にいたいって思うことって」
 真っ直ぐに自分のことを見つめる彼の熱い視線に気がつかず、眞姫は首を縦に振る。
「あ、そうだね。好きな人とはずっと一緒にいたいって思うよね」
「……本当に鈍いよな、姫って」
 まるで他人事のような彼女の言葉に、健人ははあっと小さく嘆息した。
 眞姫はそんな健人の様子に小首を傾げた後、楽しそうに話を続ける。
「七夕と言えば、短冊でしょ。健人は、何をお願いする?」
「姫は、何て願い事するんだ?」
 逆にそう訊かれ、眞姫は少し考える仕草をした。
 それから、にっこりと微笑んで言ったのだった。
「んー、いろいろいっぱいお願いしたいことはあるからね。短冊たくさん書かなきゃ」
「ていうか、そんなに願い事あるのか?」
 眞姫のその言葉に、健人はふっとその美形の顔に微笑みを宿した。
 それから楽しそうに隣で話をする眞姫を、じっと見つめる。
「短冊に書く、願い事か……」
 そうぽつりとそう呟き、健人はブルーアイを細めた。
 そんな彼の願い事は、言わずもがな。
 ――ずっと、お姫様と一緒にいられますように。






 5人の ひこ星との出会いはどうでしたか? そして、その後の織姫様は……。





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