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――何度目か分からない爆発が起こった。
不思議と、熱さも痛みも感じない。
いや、もうすでにすべての感覚が麻痺していた。
目の前には、唸りをたてて燃えさかる炎だけが見える。
……パパもママも、もう二度と会えないところに行ってしまった。
それが、直感的にその少女には分かった。
そして少女はふっと顔を上げる。
それと同時にその瞳に映ったのは、荒れ狂う炎の中からゆらりと現れた人物。
オソレルコトハナイ、オマエトワタシハ、ヒトツナノダカラ。
恐ろしく勢いを増す炎をまるで従えているかのように、その人物はゆっくりと炎の中で歩を進め、少女に近づいてくる。
引き込まれそうな、真っ赤な両の目。
だがその少女は、怖がることも泣くこともなく、そして屈することもない凛とした瞳でその人物を見据えたままだった。
そしてその人物の指が少女の頬に触れようとした、まさにその時。
「……!」
ビシィッと、空間が破裂したような音があたりに響いた。
次に少女の瞳に映ったのは、大きな背中と、そして美しく光る細身の剣。
「浄化する、消えろ」
それだけ短く言い放ち、突如現れた少年はその輝く細身の剣を振り下ろした。
刹那、少女の耳に聞こえてきたのは、この世のものとは思えない断末魔の声。
カッと眩い光があたりを包み、そして一瞬の静寂がその場を支配する。
呆然と立ち尽くす少女に、その少年は振り返った。
「大丈夫か?」
「あ……」
その少年の声を聞いて緊張の糸が切れたのか、少女の瞳からは大粒の涙がこぼれ、その足は自分の体重を支えきれずにカクンと力を失う。
そんな少女の頭を優しく撫でたあと、少年は少女をふっと抱き上げる。
「もう大丈夫だ。行こう」
その小さな少女には、十分に大きな少年の身体。
あたたかい少年の体温を肌で感じ心地よさを覚えた少女は、そのぬくもりに身を任せたのだった。