The product of illusion




「てめぇっ!! もう一回言ってみろっ!」
 いつものようにむきになって怒鳴るあいつに、俺はちらりと目を向ける。
 少し煽るとすぐにこうだ。
 呆れるほどに、単純なヤツだ。
 だが……そんな拓巳を見ると、その生意気な態度を力でねじ伏せたいという感情が不思議と生まれるのだった。
「本当のことを言って、何が悪い? 耳まで悪くなったか?」
「んだとっ!? いつまでも調子乗ってんじゃねーぞっ!!」
 そう言うやいなや、拓巳はフッと地を蹴る。
 俺との間合いをつめ、そして握り締めた拳を放った。
 拓巳と訓練をはじめて、数ヶ月。
 出会った当時に比べると、ヤツの動きも少しは様になってきた。
 不安定だった“気”の力もようやく安定し、自在に操れるようにもなった。
 だが。
「どこを狙っている? 拳を放つというのは、こういうことを言うんだ!」
 必要最低限顔をそらしてヤツの攻撃を避けた俺は、僅かに隙の生じた拓巳の腹部に握り締めた拳を突き上げる。
「ぐっ!! くっ……はっ」
 大振りな攻撃が仇となり、カウンターで俺の攻撃を受けて拓巳は表情を歪めた。
 上体が少し下がったヤツに、俺は間を取らずに今度はフック気味に左拳を放つ。
「ちっ、くうかよっ!!」
 咄嗟に屈んで、拓巳は何とかその攻撃をかわす。
 だが、無理な体勢のヤツに次の攻撃を避ける余裕はなかった。
「……っ!!」
 ガッと、鈍い音が響いた。
 俺の蹴りがヤツの顎を捉え、今度は上体が跳ね上がる。
 ドシンと無様にひっくり返ったヤツは、悔しそうにくちびるを噛み締めた。
「くそっ、ちくしょう……っ!!」
 ダメージで身体を起こすことができないままで、拓巳はギリッと歯をくいしばっている。
 とはいえ、数ヶ月前であったら、最初の腹部への打撃で気を失っていただろう。
 そういう面では、少しは進歩していると言えるだろうか。
 往生際が悪いのが、こいつの特徴だ。
 本当に、往生際が悪い……。
 そんな拓巳を見ると、俺の手で力尽くでヤツを支配したいという衝動に駆り立てられるのだ。
「口ほどにもない。弱い犬ほど吠えるとは、よく言ったものだな」
「! てめえっ、何だと!?」
 俺の言葉に頭にきたのか、ぐっと握り締めた拳を震わせ、拓巳は何とか身体を起こそうとする。
 だが、俺はそれを許さない。
 俺はヤツの肩を掴み、思い切り地に叩きつけた。
「……つっ!!」
 激痛に顔を顰めながらも、拓巳の瞳は俺を射抜くように鋭いままだ。
 そんなヤツの戦意の漲った瞳を見ると、俺はますます力でねじ伏せたい欲求が溢れてくる。
 拓巳の肩を右手で押さえつけたまま、俺は左手でヤツの顎をグッと上げた。
 挑戦的な、俺に向けられたその眼差し。
 そして。
「……!!」
 俺はそんな拓巳に、少々荒っぽくくちづけをした。
 俺を必死に引き離そうとする拓巳の胸倉を掴み、さらに強引に舌をねじ込む。
「んっ……」
 ピタリと、一瞬拓巳の動きが止まる。
 その表情は数秒前のものとは違い、頬はうっすらと赤みを帯びていた。
 余韻を持たせるようにゆっくりとくちびるを離した俺は、ふっと瞳を細める。
「さっきまでの勢いはどうした?」
「……っ、てめえ……っ!」
 カッと耳まで真っ赤にさせてから、拓巳は俺の手を振り払おうとした。
 だがそうはさせずに、再び私は自分のくちびるをヤツのものと重ねる。
 その時。
「! っ……」
 ガッと鈍い音がしたかと思うと、ピリッと痛みがはしった。
 口の中で、血の味がする。
 俺のくちびるを噛んでくちづけから逃れた拓巳は、先程までと同じように鋭い視線を俺に向けた。
「何しやがるんだよっ、おまえっ!」
 冷静さを失っている拓巳とは対称的に、俺は口元に笑みを浮かべる。
 じわりと、そんなくちびるに血が滲む感覚がした。
「そう言いながらも、気持ち良さそうな顔をしていたのは誰だ?」
「なっ、うるせーなっ!! だ、誰がっ!!」
「ならばもう一度、試してみるか?」
 そう言って、俺は再び拓巳の顎をくいっと上げる。
 拓巳はその言葉に、一瞬動きを止める。
 だが、ハッと我に返ったように拳を握り締め、俺に放った。
 それを難無く受け止めてから、俺は隙のできたヤツに再びくちびるを合わせる。
 先程の強引なものとは違い、今度は丁寧にキスをする。
 そしてゆっくりと舌を入れ、優しくヤツのものと絡めた。
 瞳がトロンとしてきた拓巳の様子を確認してくちびるを離し、俺は今度は首筋に舌を移す。
 そしてくちびると舌を、鎖骨に沿って這わせた。
「は……ぁっ、おまえ、やめ……っ!」
「本当にやめてもいいのか?」
「……っ、ざけんな……あっ」
 そっと右手で円を描くように胸を弄ると、ピクッと身体がはね上がる。
 言葉とは裏腹に、身体は正直だ。
 左手で肩を押さえつけ、右手は胸を弄り、くちびると舌は上半身をくまなく這い回る。
 すっかり拓巳のその頬は赤みを帯び、瞳には涙がうっすらと浮かんでいた。
 敢えて弄って欲しいだろう部分にはわざと触れず、身をよじるヤツの様子を俺は楽しんだ。
 拓巳はそんな俺の様子にじれったく思っているようだ。
 そういう仕草が、またたまらない。
 そして散々焦らした後、ようやく俺はふっと胸から指先を次第に下へと持っていく。
「! あ……っ」
 拓巳自身に到達した時には、すでにヤツは限界に近いことが分かった。
 そして俺は、ヤツを開放すべく優しくそして激しく上下に手を動かす。
「はあっ、ああっ!! くっ、ん……っ!」
 大きな喘ぎ声を上げ、拓巳は身を捩じらせる。
 そして私は、拓巳自身をゆっくりと口に含んだ。
「ああぁ……っ! んんっ、あっ! もう……っ!!」
 今までで一番大きな声を上げたかと思うと、拓巳は身体を仰け反らせる。
 そしてヤツは、私の口の中で欲望を一気に吐き出したのだった。




「だーーーっ!!! もういいっ、頼むからやめてくれーーっ!!」
 顔を真っ赤にさせ、拓巳はぶんぶんと首を振る。
 そんな様子にくすくす笑い、由梨奈は長い髪をかきあげた。
「なーによぉ、聞いてきたのは拓巳ちゃんでしょ? やおいってどんなのなのかって。今からが本番なのにぃっ」
「ほっ、本番ってなっ……ていうか、よりによって鳴海と俺かよっ!? 女って何でそんな気色悪いこと考えるんだ!?」
 鳥肌が立つ腕を擦りながら、拓巳はげんなりとした表情を浮かべる。
 由梨奈は悪戯っぽく笑い、言った。
「でも、なるちゃんってこんなカンジっぽくない?」
「知るかっ!! あーもう冗談じゃねーぞ……女の思考回路はわかんねーよ」
「とか言いながら、顔真っ赤よ? 拓巳ちゃーんっ」
 由梨奈の言葉に、拓巳は耳まで真っ赤にして叫ぶ。
「なっ、ざけんなよっ!!? 誰がっ」
「かーわいいー、拓巳ちゃんっ。やっぱり拓巳ちゃんって、総受けってカンジよねー」
「……何だよ、総受けって」
「それはねー、カンタンに言うと、誰にでも何にでも攻められちゃうってコト。あ、詳しく言うと……」
「な、何にでもって……って、言うな!! 言わなくていいっ!!」
 耳を塞ぎ、拓巳は大きく首を振る。
 由梨奈は楽しそうに笑って、それからも拓巳の反応を楽しみながら女特有の文化・“やおい”について語ったのだった。


 

FIN



……すすすす、すす、すみませんっ!(爆)

やっぱり最後までは無理でした;うわーもう何よ、私!(?)しかも、オチをつけないとダメー!!

つーか、前回の鳴×拓を見てもわかるかと思いますが……サディスティック、大好きです(おい)

はあぁ〜、もうなるちゃんがオカシイって!!

ていうか、やおいってマジで女の子の文化だと思いますよ〜。

しかも、本編では反発し合ってたり犬猿の仲だったりっていうCPが萌えなんですよね、私(爆)

はあぁ〜、もうマジですみません……!!

でも、なるちゃんの「弱い犬ほどよく吠える」はお気に入り(笑)

たっくんって、イメージ的には犬ってカンジですね〜。

詩音くんと健人はネコってカンジ。詩音くんペルシャっぽい。健人も外国のネコっぽい。

たっくんと祥ちゃんと准くんは犬っぽいですね〜。

たっくんはコリーとか? 祥ちゃんはレトリバー? 准くんはうちの愛犬・ミニチュアシュナウザー?


それでもって、彼ら全員の飼い主は、是非先生ってことで(爆)