※ はじめに ※

このお話は「NINE STARS' WebSite」九曜様とのコラボレーション作品です。

九曜様がうちの健人と鳴海先生を使って小説を書いてくださったものに、健人と鳴海先生のセリフだけ

私が少し書き直しをしました。

私が書いたのは健人と鳴海先生のセリフの一部だけで、ほぼ九曜さんの書かれた作品となっています。

改めて、今回お話を書いてくださった九曜さんに感謝しております!

このお話にでてくる翔くんと敬兄は、九曜様の書かれている小説「蒼・氷・月 夢†幻」のキャラです。





 








「ぐわっ」

「ぎゃっ」

 翔の射抜くような蹴りが、ふたりのチンピラの腹に一発ずつ決まり、そのまま倒れた。そ

のうちひとりは気を失ったようだが、もうひとりは辛うじて意識があった。地面に這いつく

ばったまま、うめき声を上げている。

 その男の胸ぐらを掴んでむりやり立たせると、その顔面に拳を叩き込んだ。男の身体が吹

き飛び、ショーウィンドゥにぶつかった。そのままずるずると崩れていく。

「まだ寝るにゃ早いぜ」

 しかし、翔はそれを許さず、再び胸ぐらを掴んだ。

「や、やめ……」

 懇願する男に構わず、翔は拳を放った。

 だが、それは男の顔にヒットする前に、割って入った掌によって阻まれてしまった。翔は

掌から腕を伝い、邪魔したものの顔を見た。

 翔の拳を止めたのは少年だった。

 翔より年下であろう、その顔には幼さが残っていた。整った面立ちで、右の瞳だけ神秘的

な蒼色を帯びているのが印象的だ。西洋人の血が入っているのか髪はブラウンで、光りの加

減によっては金色にも見えた。

「何をしやがる。邪魔すんじゃねえよ」

 吼える翔に対し、少年は冷静に蒼の瞳を向ける。

「……別に邪魔をするつもりはない。ただ弱いものいじめは見ていて気分が悪い。見たとこ

ろあんたの方が一方的に殴ってるようだけど、それ以上やることに意味はないだろ」

「はっ、意味だって?」

 翔は鼻で笑った。

「意味ならあるぜ。せっかく肩が当たっただけで喧嘩をふっかけてきてくれたんだ。オレの

気晴らしにつき合ってもらうさ」

 言うと、翔はもう一度男を殴りかかろうとした。だが、それよりも一瞬早く少年が動いた。

「やめろって……言ってるんだよっ」

 少年が翔の手をひねる。

 次の瞬間、翔の身体が宙に舞った。

(こいつ……)

 空中で体勢を立て直すと、翔は危なげなく着地した。そして、同時に地を蹴り、少年へと

間合いを詰めた。

「ふっ」

 呼気とともに拳を放った。だが、少年はそれを腕でガードする。

(やはりこいつ“波動”を使いやがる)

(“気”で攻撃だと……)

 ふたりはそれぞれ後ろへ飛び退き、距離をとった。

「てめえ、“夜叉”か!?」

「まさか、“邪者”!?」

 同時に問う。

 互いに相手の答えを待ち、奇妙な沈黙がその場を支配した。

「“夜叉”?……何のことだ」

 先に口を開いたのは少年の方だった。

「俺は蒼井健人。ただそれだけだ」

「ああ、そうかい。まあ、何でもいいさ。オレの邪魔をした以上、それなりの覚悟はしても

らわねえとな」

 言った翔の手にエネルギーが集まっていく。

「おいっ、ちょっと待……」

 少年、健人が言い終わらぬうちに、翔は手の中のエネルギーの塊を無造作に放った。

「くっ、“結界”も張らずに、こんなところで“気”を放つつもりかっ!?」

 健人も瞬時に手に力を集める。それは蒼い光となって現れた。緩い弧を描きながら迫り来

るエネルギー弾を、健人は蒼の掌で弾き飛ばした。後方に逸れたそれは近くのビルの外壁に

当たり、小さな爆発を起こしながら四散する。落下するコンクリートの破片にパニックを起

こし、人々の口から悲鳴が上がった。

(何だ、こいつ。邪気はないけど、おそろしく好戦的だ……)

 健人は翔を見た。

 すでに二撃目を放つ体勢に入っていた。

「いいだろう、相手をしてやる。ただし……この“結界”の中でな」

 健人の右手に蒼い光りが宿った次の瞬間、それは弾け、辺りを包み込む。パニックに陥っ

ていた街が、途端に閑散とした空間へと変化した。

 翔は周囲を見回した。

 まるでいきなりゴーストタウンに放り込まれたような感覚だった。誰もいない。存在する

のは翔と健人のふたりだけ。ふたりだけの戦闘領域。

「おもしれえ。ここでやろうってんだな」

「お前のような奴を野放しにしてはおけないからな」

 そう言った健人を見て、翔は楽しそうに笑った。再び“波動”を両手に集めると、それは

激しい紅の光となって現れた。

「戦闘狂め……」

 嫌悪感を露わにし、吐き捨てるように言いながら、健人も“気”を集める。翔とは対照的

にそれは静かな蒼を帯びていた。

 ふたりは同時に動いた。

 様子見のつもりなのだろう、ふたりの右手から収束していた力が放たれる。翔の紅の“波

動”と健人の蒼の“気”が中央でぶつかり、拮抗した力は爆発に似た轟音を上げて飛び散っ

た。

 次の行動は一瞬だけ翔の方が速かった。そして、その一瞬の差がふたりを明確に攻と防に

分けた。

 翔が手をひと振りすると五つの紅い光球が現れ、次々と健人を強襲した。直線的に飛ぶも

の。弧を描くもの。螺旋するもの。それぞれが違う軌道で襲いかかる。だが、健人はひとつ

ひとつ確実に、危なげなく避けていった。光球が着弾するたびにアスファルトの地面をえぐっ

ていく。

 回避運動をしながら、健人は両手の“気”で直径二メートルほどの球体を創った。出来上

がったそれは、彼の“気”と同じくやはり蒼を纏っていた。健人は右手の蒼球を翔へと投げ

つける。

 しかし、それは攻撃と言うにはあまりにも芸がなさ過ぎた。翔は跳躍して難なく回避した。

「ふん、くだらねえな」

 信号機の上に立った翔が嘲笑う。

「笑っていられるのも今のうちだ」

 翔とは対照的に冷めた表情でそう言うと、健人は糸を手繰るように手を引く。と、同時に、

先程翔が回避した蒼球が向きを変え、再び襲いかかってきた。

「なにっ」

 驚きながらも、間一髪それを避ける。

 蒼球が信号機を粉砕した。

「……もうひとつだ」

 健人は左手の蒼球を放った。

 ふたつの蒼球は見えない糸に操られているかのように健人の手にあわせて縦横無尽に動き、

翔を襲った。翔がそれを避けるたびに、アスファルトに、ガードレールに、ビルの外壁に、

無惨な痕を残していった。

「ビリヤードって知ってるか?」

 そう問いかけながら、健人は右の蒼球を手元に戻した。質量も物理的な力も感じさせず、

ぴたりと吸い付くように掌で止まる。

「んだと?」

 未だ変幻自在の軌道で襲いかかってくるもうひとつの蒼球を避けながら翔が応える。

「キューで手玉を突いて、目標の球をポケットに落とすゲームだ。こんなふうになっ」

 健人は右の蒼球を再び投げつけた。しかし、それは翔に向かってではなく、立った今翔が

かわした左の蒼球に向かって飛んでいった。そして、ふたつがぶつかったその瞬間、蒼球は

急激にベクトルを変え、翔を強襲した。

「しまっ……」

 さすがにそれは翔の反射神経を持ってしても避けることはできなかった。

 蒼球の直撃を受けると、小柄な翔の身体は面白いように吹き飛び、近くのショーウィンドゥ

へと背中から叩きつけられた。その衝撃にガラスが砕け散る。

「手間をかけさせるな、しばらくは大人しく寝て……なにっ!?」

 言葉の途中で健人は驚きの声を上げた。砕けたガラスがこちらに向かって飛んできたのだ。

健人は咄嗟に“気”で防御壁を張り、それを防いだ。しかし、目の前で弾き返される無数の

ガラス片を見ながら、それをこの身に受けたときのことを思うと背筋が寒くなった。

 一方の翔は、立ち上がると、念動力で飛ばしたガラス刃の攻撃が避けられことに舌打ちし

た。口の中に錆びた鉄の味が味覚を刺激する。おそらく蒼球を喰らったときの衝撃で口の中

を切ったのだろう。血の混じった唾を吐き、手の甲で拭った。

 ふたりの少年は互いに相手を睨め付けた。

(こいつ、なんて攻撃的な奴だ。どんな体勢でも仕掛けてくる……)

(やろう、攻撃よりもむしろ防御に長けてやがるのか……)

 そして、

「気にくわないなっ!」

「気にくわねえんだよッ!」

 同時に叫んでいた。

「お前みたいに人を傷つけることしか考えていない奴はなッ」

「てめえみたいに戦うことに臆病な奴はなッ」

 次の瞬間、ふたりは地を蹴り、相手に向かって駆け出していた。



 シルバーのプリメーラが走っていた。

「面倒なことになっていなければいいが」

 運転手である空知敬はつぶやいた。ハンドルを握る手の、その指の間には火のついたロン

グピースがはさまっている。

 数分前、敬は翔の“波動”が弾けるのを捉えたのだ。それだけなら敵と交戦状態に入った

のだろうと納得できるが、その直後にぷっつりと途絶えてしまったのだ。翔がそう簡単に、

しかも、一瞬で倒されるとは思えない。やはり何かの異常事態があったと考えるのが妥当だ

ろう。

 もうひとつ気になることがあった。

 それは先程から目の前を走っているダークブルーのウィンダムだった。敬にはその車種と

色、そして、ナンバーに覚えがあった。

(葵さんのは黒だから除外。とすると、ダークブルーで、あのナンバーは確か鳴海さんか……)

 もし前を走る車が、真実、鳴海のもので、しかも目的と行く先が同じだとすれば、先程の

願いも虚しく面倒なことになっている可能性は高い。

「まいったな……」

 そうつぶやき、まるでため息をつくかのように煙草の煙を吐いた。

 と、そのとき、敬の携帯電話が鳴った。ジャケットの内ポケットからそれを取り出し、ディ

スプレイを見ると、『非通知』の三文字があった。

「もしもし」

 道路交通法違反を犯しつつ、敬が応える。

『鳴海だ。空知、今どこにいる?』

 よく響く深みのある声が電話の向こうから聞こえてきた。

「バックミラーの中、というのはどうです?」

『……なるほど。ついてこい』

 そう言って、鳴海は敬の返事も聞かずに電話を一方的に切った。途端、ウィンダムが加速

した。敬は煙草を灰皿でもみ消すと、ハンドルを両手で持ち直し、アクセルを踏み込んだ。

(鳴海さんの車は禁煙車だろうか?)

 ふとそんな疑問が敬の頭をよぎった。無論、答えの出ない問いについて長々と考えを巡ら

せるほど敬も暇ではないので、一瞬後にはくだらない疑問は霧散していた。

 程なくふたりは駅のバスターミナルに車を止め、ほぼ同時に車から降りた。互いに数歩、

歩み寄る。

 鳴海将吾。

 歳は敬よりも少し上。現在、聖煌学園で数学教師をしている。切れ長の目と近寄りがたい

雰囲気はどこか敬と共通するものがある。敬から見て鳴海将吾という男を一言で表すと『究

極の合理主義者』である。鳴海はある能力者集団を指導、統率する立場にあるのだが、未熟

な能力者たちを効率的に一人前にするためには躊躇なく憎まれ役を演じる。ただ単に憎まれ

るだけなら誰にでもできるが、そうしながら尚かつ統率もこなすには、それなりのカリスマ

性も要求される。自分にはできない真似だと敬は思う。

 それと同時に敬は、鳴海が憎まれ役を演じ、本当の自分の姿を隠しながら、他にも重大な

何かを隠しているような気がしている。隠し球、それもとびっきりの魔球をギリギリまで見

せない。そんな怖さが鳴海にはあるのだ。

「うちの翔とそっちのひとりが揉めてるみたいですね」

「そのようだな」

 簡潔に答えると、行き先も言わず鳴海は歩き出した。敬もそれに続く。

「いろいろい事情があって、あいつも今、荒れてますから」

 翔は、策略だったとは言え、自らの手で恋人を斬殺し、先日父親を殺されている。もとも

と好戦的なこともあって、今はかなり危険な精神状態にあるのだ。

 だが、鳴海は敬の言う『事情』に興味はないらしく、特に何も訊こうとはしなかった。

「で、例の閉鎖空間結界がどこに張られているかわかりますか?」

 そう尋ねると、鳴海は切れ長の目で敬を見た。

「《空》の“天照”とは思えない言葉だな」

「そっちと一緒にしないで貰いたいですね。同じように『能力者』と呼ばれてますが、その

性質はまったくの別物。“結界”を知覚することもできなければ、それに干渉することもで

きませんよ。無論、私であってもね」

「そうか」

 程なく鳴海の足が止まった。

「ここだ」

 そう言われても、そこは繁華街の真っ直中で、特に結界の存在を示すようなものは見あた

らなかった。おそらく鳴海には知覚できているのだろう。唯ひとついつもと違うのは、人集

りができている場所があることだった。集まったものたちは頭上を見上げたり、指さしたり

して騒いでいた。敬も同じように視線を上方へ移すと、そこには無惨な破壊痕を刻まれたビ

ルの外壁があった。

「なるほど」

 敬は納得した。

「それでは“結界”への干渉は任せますよ」

 承知したのか、鳴海は無言で一歩前へ出た。



 一方、その頃、

 翔と健人は、先程とは打って変わって接近戦が繰り広げていた。

 翔の拳打を健人が捌く。

 健人の蹴撃を翔が受け止める。

 衝突の度にふたりが収束させた紅と蒼の力が光の粒子となって飛び散った。

 翔の掌底が健人の顎を打つ。

 健人の肘が翔の腹をえぐる。

 どんな打撃を受けても、ふたりは歯を食いしばって踏みとどまり、一歩も退かなかった。

 その姿はまるで互いに譲れない最後の一線に立ち、そこに踏みとどまることに意地になって

いるかのようにも見えた。

 突然、翔の腕が炎に覆われた。そして、その炎を帯びた手を健人へと振るう。しかし、健人

は驚異的な反射神経でもって上体を反らしそれをかわした。一瞬前まで健人の顔があった空

間を炎が通過する。

「……ちっ!」

 健人は攻撃を回避した不安定な姿勢のまま身体をひねった。そして、勢いをつけて翔を蹴

り飛ばす。いわゆる胴回し回転蹴りである。

 健人の蹴撃を側頭部に受けた翔は、その衝撃に一度は倒れたが、地面で一回転するとすぐ

に立ち上がった。対する健人も無理な体勢から攻撃に移ったことで完全に身体のバランスを

失っていたが、何とか体勢を立て直すことに成功していた。

「幻覚じゃない。“気”を炎に変換したのか……?」

 健人は熱を感じた顔に手を当てながらつぶやいた。

「よお」

 ふいに翔が声をかけてきた。

「なかなか荒っぽいことするじゃねえか」

「ああ……自分でも驚いてるよ」

 確かに健人はここまで攻撃的になっている自分を意外に思っていた。おそらく翔に対し何

か譲れないものを感じ、躍起になって倒そうとしているのだろう。だが、その原因となるも

のが何なのかはまだわからないでいた。

「お前こそ、どうしても俺を叩きのめしたいみたいだな?」

 健人は相手を理解することで自分の心理を探ろうと、翔に問いかけた。

「敵は潰す。それがオレのやり方だ」

「やり方?お前のことだ、どうせ気晴らしとでも言うんだろうな」

「違う。大切なものを守るためだ」

 そう言う翔の拳が固く握りしめられる。

「敵を逃せば何度でも向かってくる。そして、いつか大切なものを奪う。だから、一度でも

オレの敵に回った奴は徹底的に潰す」

 それがオレのやり方だ。翔は再びそう言って言葉を締めくくった。

「攻撃は最大の防御……斬られる前に斬れ、か。わからなくもない。だが……」

 健人は翔の言葉に納得した。

「気にくわないな」

 同時に先程から感じていた翔への反発心が何かも理解した。

「大切なものを思う気持ちはわかる……何があっても守りたいものが、俺にもあるからな。

だがそれなら、降りかかる火の粉を払いのけるだけでいいはずだ。お前みたいに必要以上

に相手を傷つけることはないだろう?」

「だから、それがオレのやり方だと、お前とは違うと言ってるだろうがよ」

「らしいな……結局は俺とおまえは違う。それなら、俺は俺のやり方で、降りかかる火の粉

を払いのける」

 その言葉が合図であるかのように、ふたりは再び身構えた。

 翔の手には紅い“波動”が、健人の手には蒼い“気”が集まり、次第に大きくなっていく。

 そして、それが極大にまで収束すると紅と蒼の力は、その意味は違えど敵を倒すために、

解き放たれた。

 と、そのとき、

 すっ、と静かにふたりの間に割って入る人影があった。

「空知さんっ」

 翔がその人物を視認し、思わず名を叫ぶ。

 だが、放たれた力を回収することはできない。翔と、そして、健人の掌から放たれた極大

の衝撃波は、間に立つ敬へと一直線に向かっていった。

 しかし、次の瞬間、それらは敬の数歩手前で音もなくかき消えていた。

 突然のことに言葉をなくす翔と健人。

「他人が創った閉鎖空間結界の中でも私の特殊結界は十分に作用するようだな」

 ふたりを無視し、敬は状況を確認しながら言った。

「それにこの感覚……。なるほど、これが血というものか……」

 続けて敬は自分の力を確認するかのように、胸の前で拳を握り、開き、再び握った。

「……誰だ? そいつの味方か?」

「ああ。だからと言って、イコール君の敵というわけではない。ただし、少年、君の出方に

よってはその図式は成り立つことになる」

 敬の言葉には内容ほどの激しさはなく、健人の攻撃性を軽く受け流し、どこか優しく諭す

ような口調だった。

「翔は連れて帰る。君も結界を解き、ここは退いて欲しい」

「嫌だと言えば?」

「それならそれでいっこうに構わないさ。君がそう答えたことを後悔することになるだけだ。

それに、今の私はそれも面白いと思っている」

 そう言って薄く笑った敬を見て、健人は不必要な挑発をしたことを後悔した。後ろで聞い

ていた翔にしてもここまで好戦的な態度を見せる敬は初めてだった。

「……俺もこれ以上無意味な消耗はしたくないからな」

 健人は右手を掲げた。同時に結界は解かれ、周囲に日常の喧騒が戻った。

「賢明な判断だ」

「ていうか……よく俺の結界の中に入れたな」

 健人が言う。

「この結界に干渉したのは私ではないよ」

「……何? じゃあ、誰が?」

「私だ」

 横からよく通るバリトンの声が聞こえてきた。聞き覚えのある声に健人は小さく「げっ」

とつぶやき、顔をしかめた。

「鳴海……」

「健人、彼等のことは後日説明する。今日は速やかに帰れ」

 その頭ごなしの指示に健人は不服そうな態度を見せたが、不承不承従うことにした。一度、

翔に視線を移したが何も言わずそのまま立ち去ろうとする。

「てめえ、待ちやがれ」

「翔」

 飛び出していこうとする翔を敬が手で制した。

「次会ったときは絶対にケリつけてやる」

「勝手に息巻いてろ……俺はもう二度とお前とは会いたくない」

 そう言うと、健人は翔へと振り返ることなくその場を後にした。

「空知、迷惑をかけたな」

「まったくだぜ」

 敬よりも先に翔が口を開き、忌々しげに言った。

 鳴海の視線が翔へと移り、その切れ長の目で見つめる。

「んだよっ」

 だが、鳴海は特に何も言おうとはせず、再び顔を敬へと向けた。

「彼が《天照の剱》か」

「ああ」

「守れよ」

「言われるまでもない」

 そうして敬との短いやり取りの後、鳴海も去っていった。

「何者なんです、あいつら」

「私たちとは別系統の能力者だよ。本来接触することのないはずなんだが、ちょっとした運

命の気まぐれがあったようだな」

「ふうん」

「さて、私たちも帰ろうか。家まで送るよ」

 そう言うと、敬は翔の頭を乱暴に撫でた。

 翔は未だ納得していない様子で、健人と鳴海の去った方を見ていた。






あとがきという名の感想(笑)


このお話は、このページのトップにも書いていますが、九曜様とのコラボ作品です。

九曜さんがうちの子を使って小説を書いてくださったものですv

九曜さんに書いていただいたものを、私が健人と鳴海先生のセリフを少し手直しさせていただきました。


まず、うちの子とは思えないくらい健人がかっこいい〜!正義感の強い健人、いいですv本物も見習えよ‥(爆)

うちの健人は、姫にうつつを抜かし過ぎな感じが否めないので;

でも姫がいないところでは、普段の彼はこのお話のような感じではないかと親ながらに思います;

鳴海先生は、まさにイメージ通りで(笑)特に通称“鳴海コール”まで入れてくださって‥(笑)

ていうか、本当に何者なんでしょう、鳴海先生(笑)


それから、このお話に出てくる「翔くん」と「空知敬さん」は、九曜さんの小説のキャラです。

九曜さんの小説「蒼・氷・月 夢†幻」は、迫力あるバトルシーンと登場人物が多彩なお話ですので、オススメですよ!

私、九曜さんのお話の敬兄がめっちゃ大好きなんですよ〜vv

九曜さんは本文中に「切れ長の目と近寄りがたい雰囲気はどこか敬と共通するものがある」と書いて

いらっしゃいますが、
うちのサディスティックで鬼畜な(爆)鳴海先生とは違い、敬兄はすごく優しくて紳士な方ですv

翔くんは、もう本当に弟のように可愛いんですv今回も暴れていますが(笑)母性本能をくすぐられますv


最初にうちの健人と翔くんのバトルと聞いた時、うちのへっぽこが断然弱いんじゃ‥と心配したんですが(笑)

ふたつの小説の世界をうまくまとめてくださって、読んでいて面白かったですvv

今回はどうもありがとうございました、九曜さん!