※ この話は軽い冗談です。冗談のお分かりになられない方、そして腐女子的な発想が苦手な方は即バックしてください。尚、読まれた際の苦情や批判は受け付けておりません、ご了承ください。



 番外連載・おまけ

 ――藍が喧嘩をして帰ってきた、次の日。
 藍と同じ色の瞳を細め、彼女は美人なその顔に笑みを浮かべる。
 そんな彼女の瞳に映っているのは、3人の生徒の姿。
 ひとりは、ブラウンの髪に近寄りがたい切れ長の瞳を持つ少年。
 そしてもうひとりは、物腰柔らかで穏やかな印象の美形の少年。
 そのふたりを両腕に侍らせるように中心に位置を取っているのは、ふわふわのウェーブがかった髪が印象的な派手な印象の少女。
 学校でも名高い有名人軍団なその3人の生徒たちだったが、彼女は臆することなく彼らに近づいた。
 そして、近寄りがたい雰囲気の少年に声をかけたのだった。
「あ、鳴海くーんっ」
 その彼女・藍の姉である香夜の声にまず振り返ったのは、呼ばれた少年・鳴海将吾以外のふたりだった。
「あれ、香夜ちゃんじゃない。どうしたの?」
「はろー、由梨奈ーっ」
 高校生にしては色気のある雰囲気を醸し出すその少女に、香夜はにっこりと微笑みを返す。
 由梨奈と呼ばれたその少女は、ウェーブの髪と妖艶な容姿を持つ生徒会の議長を務める少女であった。
 香夜とは高校1年の時に同じクラスであったこともあり、気が合う仲のよい友達である。
「大河内さん、こんにちは」
 そんな由梨奈の隣で、物腰柔らかな美形の少年・生徒会長の杜木慎一郎は神秘的な漆黒の瞳を細める。
 香夜は整った杜木の顔に視線を向け、無邪気にヒラヒラと手を振った。
「あ、杜木くんもはろーっ」
 そして。
「俺に何か用か?」
 ようやく振り返ったのは、聖煌学園の副生徒会長・鳴海将吾。
 この生徒会長の杜木、副生徒会長の鳴海、そして議長の由梨奈の3人はそれぞれ幼馴染みでもあり、最強と謳われている生徒会役員の生徒であった。
 そして香夜が今回用があったのは、副生徒会長・鳴海である。
 香夜は藍と同じ漆黒の前髪をふっとかき上げると、口を開いた。
「あ、昨日うちのアイちゃんが鳴海くんにお世話になったみたいだから、お礼言っておこうと思って。ありがとっ」
「アイちゃんって……香夜ちゃん溺愛の弟くん? 確か、うちの学校の1年だっけ」
 思い出すようにそう言った由梨奈に、生徒会長の杜木はふと首を傾げる。
「大河内さんの弟、1年Dクラスの大河内藍くんだね。彼が、将吾の世話に?」
 杜木の言葉にこくんと頷いた後、香夜は再び視線を鳴海に戻した。
 鳴海はそんな香夜に、相変わらず素っ気無く言った。
「特に何か彼の世話をしたつもりはない。従って、礼を言われるようなことも特にない」
「えー何、なぁに? 何があったのよ?」
 興味津々な様子で、由梨奈は鳴海と香夜の顔を交互に見る。
 香夜はニッと悪戯っぽく笑うと、そんな由梨奈の問いに答えたのだった。
「何があったかって……それはひ・み・つーっ。あ、そういえばアイちゃん、昨日鳴海くんと濃い時間が過ごせて、すっかり吹っ切れたーって言ってたわよ?」 
 その言葉を聞き、由梨奈はますます好奇心旺盛な瞳を輝かせる。
「えっ、すっかり吹っ切れたって……昨日そのアイちゃんと、一体何があったのぉっ!? なるちゃんっ」
 からかう様にあははっと笑い、由梨奈は鳴海の肩をバシッと叩く。
 鳴海は無言で呆れたような目を彼女に向けると、再びスタスタと廊下を歩き出した。 
 そんな鳴海の姿をちらりと闇のような漆黒の瞳で見た後、香夜の悪戯っぽい笑みに気が付いた杜木もその言葉に乗るように楽しそうに言った。
「濃い時間? ダメだよ、将吾。下級生に手を出すなんて」
「……本当に、おまえらの言うことはくだらん」
 楽しそうに自分をからかう3人にじろっと視線を投げ、鳴海は呆れたように大きく嘆息する。
 そしてブラウンの前髪をかき上げ、首を小さく横に振った。
 ……その時。
 香夜はふと顔を上げると、おもむろに瞳を見開く。
 それからふっと美人なその顔に微笑みを浮かべて、口を開いたのだった。
「あら、アイちゃん? どーしたの、2年の教室に来るなんて」
「あ、お姉ちゃん? いや、鳴海先輩にちょっと……」
 4人の前に突然現れたのは、紛れもなくウワサの人物・香夜の弟の藍だった。
 由梨奈は思いがけない話の主役の登場に、さらに楽しそうな表情を浮かべる。
 藍は学校の有名人である豪華メンバーのメンツに少し気後れしつつ、視線をちらりと鳴海に向けた。
 そして眼鏡の奥の漆黒の瞳を細め、ぺこりと頭を下げて言ったのだった。
「鳴海先輩、昨日はありがとうございました……昨日のことがあって、本当に目が覚めました」
「本当に目が覚めたって……まったくなるちゃんってば、可愛い後輩くんに何したのよーっ」
「由梨奈、おまえは少し黙ってろ」
 きゃあっとはしゃぐ由梨奈にそう言って、鳴海は再び溜め息をつく。
 香夜はそんな鳴海の様子にふっと悪戯っぽい表情を再び浮かべると、目の前で小首を傾げている弟にこう聞いたのだった。
「ねぇ、アイちゃん。それで昨日の鳴海くんって、どうだったのぉ?」
「昨日の、鳴海先輩?」
 姉の言葉に首を捻りつつ、藍はうーんと考える仕草をする。
 そして昨日のことを思い出しながら、こう言ったのだった。
「昨日の鳴海先輩、本当にすごかったですっ。僕、思わず興奮しましたっ」
「す、すごかった……!? って、本当に何したのよ!?」
 由梨奈は思いがけない藍の言葉に、思わずきょとんとする。
 杜木は必死に笑いを堪えるような仕草をし、目の前の鳴海に言った。
「可愛い後輩を興奮させるなんて……妬けるよ、将吾」
「アイちゃんってば、もう可愛いんだからぁっ」
 おなかを抱えて笑いながら、香夜は弟の肩をバシバシと叩く。
 そしてひとり今の状況が分かっていない藍は、首を傾げながら何度も瞬きをしていたのだった。
 そんな藍に切れ長の瞳を向け、鳴海ははあっと大きく嘆息する。
 それから、まだきょとんとしている彼に言った。
「こいつらの相手をするだけ時間の無駄だ、放っておけ」
「え? 鳴海先輩?」
 藍は鳴海の言葉に、ますます分からないといったような不思議そうな顔をした。
 それからスタスタとひとり廊下を早足で歩き出した鳴海の後姿を見送り、香夜はまだ笑ったままでこう言ったのだった。
「鳴海くんって、結構からかったら面白いのねー」
 ……南の国の魔女・グリンダの微笑みは、どうやらこの時から健在だったようである。


おまけ -FIN-




言い訳:この話(?)は、実は番外連載の本編に入っていた部分だったんですが、あまりにも腐女子フィルターが

かかりすぎたため、番外連載では削除しました;でもお友達から脅されて?せっかくだからオマケで更新して欲しいと

要望があったために引っ張り出してきました(謝)ちなみに文中出てくる由梨奈さんも、「Sacred Blood」のキャラです。

本当に好き放題してごめんなさい;ちゃんと軌道修正して本編の連載も始めたいと思っておりますので;