Golden knits three




 ある晴れた日の朝。
 朝日が眩しく部屋に差し込める中、彼はスヤスヤと寝息をたてていた。
 そんな彼の睡眠を打ち破ったのは……。
「おい、螢惑! 朝だぞ、起きろ!」
「んー……ゆんゆん?」
「ゆんゆん? じゃねーよ。ほら、さっさと起きろ」
 師匠であり同居人である ゆんゆん こと遊庵に布団を剥がされ、螢惑は身を縮める。
 だが一瞬目を開けたが、枕をぎゅっと抱きしめて再び眠りに落ちたのだった。
「おら、起きろっつってんだろーがよっ」
「あっ、布団……」
 敷布団ごとひっくり返され、螢惑はごろんと床に投げ出される。
 そして布団を奪った遊庵に、ちらりとその橙色の瞳を向けた。
 その両の目は、まだ完全に寝ぼけている。
 遊庵は朝食の準備をしながらも、ボーッと視線の定まらない螢惑に櫛を渡した。
「おまえ、頭ボサボサだぞ? 髪くらい梳けよ、ほら」
 ぽいっと投げられた櫛を受け取り、螢惑はしぶしぶと髪を梳き始める。
 螢惑の美しい金色の髪が朝日の光でキラキラと輝き、美しさを増す。
 梳かれるたびに揺れる毛先は、その太陽の光と共鳴してまるで透き通ってさえ見える。
 それから螢惑が上体を起こし髪を梳きだしたのを見て、彼から数分目を離した遊庵だったが。
「螢惑……」
 次に振り返った瞬間、大きく溜め息をつく。
 そしてズカズカとわざとらしく足音をたてて歩き、彼の耳元で叫んだ。
「つーか、髪梳きながら寝るんじゃねー!! 一生起きれなくしてやるぞ!!」
 髪を梳かしながら再び眠りの世界に入りかけていた螢惑は、遊庵の声にビクッと身体を震わせる。
 そして数回瞳をパチパチと瞬きをさせて、振り返った。
「……わ、びっくりした! そんな大きな声出してどうしたの、ゆんゆん?」
「つーか、おめーが起きねーからだろーが」
 相変わらずマイペースな螢惑に、遊庵はもう一度溜め息をつく。
 寝起きの悪い天然ボケマイペースな弟子とのこんなやり取りは、もう慣れているのだが。
 まだ眠そうな螢惑の様子を見て、遊庵は彼から櫛を取り上げる。
「そんなチンタラ梳いてたんじゃ、いくら時間あっても足りねーよ。貸してみろ」
「ゆんゆん?」
 ストンと自分の後ろに腰をおろした師匠に、螢惑は不思議そうに振り返った。
「ほら、前向いてろ」
 そんな螢惑の顔を強引に前に向かせ、そして遊庵は彼の金色の髪を梳かし始める。
 背中まである長い髪が、綺麗に揃っていく。
 遊庵は櫛を口に咥えると、器用に小指で金色の髪をふたつに分けた。
 金色の髪は丹念に梳いたため、スッと綺麗に分かれる。
 そして螢惑の髪はくせ毛であったが、遊庵はスルスルと難無く2本の三つ編みを編み上げていった。
 それから髪留めでおさげの先端を結び、その出来に満足そうにニッと笑った。
「終わったから動いていいぞ、螢惑」
 だがそんな師匠の言葉に、弟子の返事はなかった。
 遊庵は頭をかきながら、螢惑の顔をふと覗き込む。
「螢惑のヤツ……三つ編みされながら、余裕で寝てるじゃねーかよ」
 コクンと首が前に振れるたびに、それと同時に金色のおさげも揺れていた。
 仕方がないなと言わんばかりに、遊庵は薄い掛け布団を螢惑の肩からそっとかける。
 それから、再び弟子の顔を覗き込んだ。
「そんな無防備な顔して眠って……」
 そう呟いた遊庵は、眠っている螢惑を起こさないように少しその顎を上げる。
 そして。
 ゆっくりと、自分のくちびるを螢惑のものと重ねた。
 それは……羽のように軽い、くちづけ。
 キスされたことも気がつかず、螢惑は無邪気にスースーと寝息をたてている。
 遊庵の結ったふたつの金色の三つ編みが、朝日を浴びながら輝いていた。
「この調子なら、今日も辰伶のヤツに水ぶっかけてもらわねーと起きねーな、こいつ」
 ふうっと溜め息をついてから、遊庵はニッと笑う。
 螢惑の頭をポンッと軽く叩き、そして遊庵は弟子の寝顔を見つめてもう一度微笑んだのだった。




 これが……ふたりの毎朝繰り返される、日常。





FIN





ゆんほたちっくです〜。ほたるは言わずもがな、ゆんゆんも好きーv
ていうか、甘いのか何なのかよく分からない内容に(爆)
ほたると同棲していたなら、ゆんゆんは結構器用に家事とかこなせるんじゃないかとv(妄想)
この話は、ほたるんの面倒をみるゆんゆんと、ほたるんの金色のおさげが書きたかったんです;
この師弟、本当に大好きですー!
早く本編でもまたふたりのシーンが見たいな♪







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