幸せのカタチ




「アキラ、何やってんの?」
 広い原っぱの真ん中でしゃがみこんでいるアキラに、ほたるは首を傾げる。
 その声に振り返ったアキラは、青緑の瞳をキラキラと輝かせながら言った。
「さっきね、町娘に聞いたんだよ。ここにあるって」
 興奮した面持ちのアキラは、早口で言葉を続ける。
「幸せの四葉のクローバーが、ここにはあるんだって!」
「四葉の……何?」
 金色の前髪をかけあげ、ほたるはさらに首を捻った。
 アキラは立ち上がって、手に持っているものを見せる。
「知らないの、ほたる? 普通はこれみたいに三葉だろう? でもね、この葉が四つのものを見つけたら幸せになれるんだって!」
 ほたるはアキラの差し出す三葉のクローバーを、じっと橙色の瞳で見つめた。
 それを指で摘み、くるくると回してみる。
 それから言った。
「人間って、そーいうこと好きだよね。迷信とか縁起とか」
「四葉って珍しいんだよ? どうしてそう鉄仮面なんだよ、ほたるは」
 冷めた反応のほたるに、アキラは不服そうな表情を浮かべる。
 ほたるはアキラの様子もお構いなしで、続けた。
「だって、その葉っぱ普通の葉なんでしょ? 美味しそうでもないし」
「美味しそうって……何だよ、もういいよっ。ひとりで探すから」
 ぷいっとそっぽを向いて、アキラは再びしゃがみ込む。
「……? 何怒ってるの、アキラ?」
「別にっ、あっち行けよっ」
「うん、じゃあね」
 途端に機嫌の悪くなったアキラに不思議そうな顔をしながら、ほたるは言われたままに彼に背を向けて歩き出した。
 アキラはちらりとほたるの背中で揺れる金色の三つ編みを見た後、再び四葉を探し始めたのだった。





 その日の、夜。
 雲ひとつない夜空に、美しい弧を描いた月が地上を照らしている。
「ねぇ、アキラ。さっきの……何だっけ、葉っぱ見つかった?」
「…………」
 ほたるの言葉に、アキラは顔を顰める。
 あれからしばらく、あの場所で四葉のクローバーを探していたアキラだったのだが。
「いや……探したけど、見つからなかったよ」
 ほたるから視線を逸らし、アキラは溜め息をつく。
 こんなに探したのに……自分は、幸せにはなれないんじゃないだろうか?
 すっかり俯いてしまったアキラに、ほたるはゆっくりと近付いてきた。
 そして。
「はい、これ」
 しゃがみこんだほたるは、アキラの目の前にスッとあるものを差し出す。
 今まで節目がちだったアキラの青緑の大きな瞳が、途端に驚いたように見開かれた。
「えっ、これ! どうしたの、ほたる!?」
「ん? 何かたまたま下見たら、見つけた」
 アキラの目の前にあるのは、紛れもなく探していた"幸せの四葉のクローバー"であったのだ。
 瞳をキラキラ輝かせるアキラに、ほたるは言った。
「それ、アキラにあげる。アキラに教えてもらわなかったら、見つけられなかったし」
「これが四葉かぁ。はじめて見た……」
 はい、と手渡され、アキラはそっとその四葉を摘む。
 嬉しそうなアキラに、ほたるは橙色の瞳を向けた。
「本当に人間って好きなんだね、迷信とか。でもね……それ見つけた時、なんかちょっと嬉しかったから……結構そーいうのも悪くないなって」
「ほたる……」
 ほたるの言葉に、アキラはふっと顔をあげる。
 月光に照らされたほたるの綺麗な金髪が、神秘的な輝きを放っていた。
 ほたるはアキラの髪を撫でて、そしてふっと瞳を細める。
「もう、ほたるっ! 子供扱いするなよ」
 撫で撫でされる手の感触に顔を赤らめながら、アキラは照れたようにそっぽを向いた。
 ほたるはアキラの隣に座り、そして彼の肩をポンポンッと叩く。
「ねぇ、アキラ」
「何だよ、ほた……!」
 くるっと振り返ったアキラは、次の瞬間驚いた表情をした。
 振り返ったアキラが感じたそれは……柔らかで、優しい感触。
 ほたるのくちびるが、アキラのそれにそっと重なっていた。
「なっ……」
 顔を真っ赤にさせるアキラに、ほたるはフッと笑う。
「あ、ホントだ。幸せなこと、あったね」
「って、おまえが勝手にキスしたんじゃないかっ」
「え、何?」
「何、じゃないだろっ」
「何? あ、もしかして照れてるの、アキラ?」
「だっ、誰が照れてるって言うんだよっ」
 月明かりの下、ふたりはいつものように楽しそうにじゃれ合う。
 その間も、アキラの手にはしっかりと四葉のクローバーが握られていた。
 幸せは、意外とすぐ近くにあるものかもしれない。
 この時、そうアキラは感じたのだった。




FIN





本日は、アキラデーです〜(何)
絵も小説も、昔のきゃわいいアキラが書(描)きたい気分だったんですv
しかし、何か最近ほのぼの〜な作品が多いですね〜。
基本はほたる受けなんですが、アキラ相手ではリバおっけぃ♪
ていうか、ほたアキ好きだったりします; ほたるんはもちろん、昔アキラ超かわいいーv
節操なしで、ごごごめんなさーい!








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